3/13 00:00

 午前零時、私のMYSCONは始まっていた。
 MYSCONでは徹夜になることが予想される。睡眠時間帯をずらすため夜更かしが必要だ。しかしなにをしていよう。そうだ、読書会の課題本である島田荘司『ネジ式ザゼツキー』と、同じ作者の『眩暈』を比較した文章を書こう。そしてMYSCONが終わった後でレポートと一緒に公開しよう。いや、どうせなら海賊版資料とかいって読書会でゲリラ配布するのも面白いな。
 かくしてキーボードを叩き始めた。書こうとしている内容は原稿用紙一枚に収まる。しかしそれでは短すぎるから、幻想とフィクションについて簡単に定義を書こう。

 午前三時。私は呆然としていた。言霊、仮説演繹法、赤い素数、ハンプティ・ダンプティその人さえ混乱させるようなパズル……話がまったくつながらない。
 傷心を胸に布団につく。読書会で配るにはコピーと製本が必要だ。それにMYSCON会場に行く前に映画『イノセンス』を観るつもりだ。もう時間がない。
 仕方がない、当初の予定通りMYSCONが終わった後で完成させてサイトで公開しよう。では、おやすみなさい……。

 午前七時。なぜか目が覚める。
 布団の中で考える。落ち着け、睡眠時間は四時間しかとれてないぞ。もう一度眠るのだ。

 午前九時。私はキーボードを叩いていた。すべて書き直し。ああ、MYSCONスタッフの皆さんはいつもこんな苦労をしてるのか、大変だなぁ(MYSCON開始八時間半前になって原稿を一から書き始めてるのはお前だけじゃい!)。

 午後一時、出発。コンビニで原稿を二十部コピー。池袋HUMAX シネマズ4 にて製本作業をしている電波系不審人物を目撃された方、警察に通報しないでくれてありがとう。
 で、映画『イノセンス』を観た。感想を一言で表すと、豪華絢爛。CGとか映像技術はこれ以上どこへ進化すればいいのか考えさせられるほどだった。

3/13 17:00

 午後五時前、MYSCON会場の森川別館に到着。案内されて「明月」の部屋に移動。(゜(○○)゜)さん素天堂さんの古本談義にひたすら圧倒される。

 午後五時二十分、大広間に移動。市川憂人さんにご挨拶。怪しげなBGM。市川尚吾さんもやってくる(アアー、そういえば今年は全然お話しできなかったぞー、スミマセン)。

 午後五時半。フクさんのあいさつ、そして高田崇史さんインタビュー。以下、印象に残ったこと。
 いきなり「神田」という地名の由来とか「江戸っ子は成田山にお参りしない」とか、ある意味QEDシリーズの作者らしいスタート。歴史、パズル、お酒、どれも等分にお好きとのこと(……今思いつきましたが、ならば薬学ミステリもそのうちお書きになるのでしょうか)。バーで最初に注文するのは? TPOだそうです。女性と夜の街に消えていくため飲ませるお酒は? TPOだそうです。
 パズルはピー君系(いじわる問題や頓知で解くもの)がお好みだそうです。変態パズラー(千波君系の、頭を酷使することに喜びを感じるパズラー)はいらっしゃいますかという逆質問に市川憂人さんが手を挙げました。滅・こぉるさんの質問でレイモンド・M・スマリヤンは読んでいらっしゃらないことが判明。金鉱を掘り当てましたね。
 既に飲んでいる浅暮三文さんがメフィスト賞のシャーロック・ホームズ像について質問。講談社を揺るがす大問題にな……らないか。
 最後にフクさんの要望でパズルを一題、ホワイトボードに残して颯爽と立ち去られる。休憩時間、ピー君系だろうなぁと考えているうちに珍しく答えを思い付き、思わず小躍りしてホワイトボードに指で答えを書いてしまう。マナー違反でしたね、ゴメンナサイ。

 休憩時間。「明月」に戻り、予め買っておいたパンで夕食。入れ替わり立ち替わりで喜多亘さん、ごんべさん、素天堂さん、そらけいさんたかはしさん等と、このミス何冊読んだかなとか、読書生活の工夫と苦労と悲しみとか、SFのほうのコンペはこんなんだよとか、色々雑談。nakachuさんにサインを求められスッゴイ動揺。

3/13 20:30

 さて、全体企画「MYSCONに来れば桶屋が儲かる」のため企画部屋Bに移動。
 今年のお題は「MYSCONに来れば」から始めて、五段階で「~が儲かる」に結論付けるというもの。なにが儲かるのかは勝手に決めてよいし、五段階以下でもよい。
 グループ8は近田鳶迩さん進井瑞西さん松本楽志さん、戸田和光さん、素天堂さん、アーネストさん、たれきゅんさん鞘鉄トウさんが一緒でした。
 進井さん、たれきゅんさん、松本楽志さんが物凄いエネルギーでグイグイ話を進めてくれるので、ぶっちゃけ楽でした(<おい)。前から順番に考えようということになり、確か「森川別館に泊まっていた受験生が東大に落ちる」という方向を最初考えていました。それから「MYSCONをミスコンと勘違い」という線がでてきて、東大ネタと結びついた、というような感じ。ひたすらシュール。

 午後八時半、大広間で全体企画スタート。グループ8がいきなり初陣。でも進井さんと松本楽志さんがコンビを組んでの発表だったため安泰。
 印象に残ったのは浅暮さんの酩酊、東西線と間違えて南北線、卓球Iランド、石原プロ、大トリ全員登場ジャパネットたかた。ウーム、参加していない方には意味不明の文章ですのう。

3/13 22:15

 読書会「島田荘司『ネジ式ザゼツキー』」に参加するため企画部屋Bに移動。
 人が集まりだす前に海賊版資料眩暈的幻想、ネジ式フィクションをバラまく。かくして私の苦労は報われた(……ことにしておこう)。開始を待っていると滅・こぉるさんが隣に座られ『カントールの楽園で』について小一時間問い詰められ大変ありがたい助言を頂きました。
 で、主催蔓葉さんの声で読書会開始。エー、島田荘司大先生は誰からも愛されているのだなと。皆さんとても溌剌とした笑顔で会話されていました。ええ、ホントに、それはもう……なんていうの? ストレス発散? そうか、あれは偽物だったのか……。
 スズキトモユさんの「森博嗣の影響を受けているのでは」という意見にハッとさせられました。あと、あの段組とフォントの使い分けの謎はけっきょくなんだったのだろう。

3/13 23:30

 大広間に移動。そろそろ頭がしびれだす。いつもなら杉本は寝ている時刻です。
 漏れ聞こえた、たかはしさんの「ミステリはプロット」という声にフラフラと会話の輪に入る。ライトノベルとミステリについての話題で、こちらはライトノベルと本格ミステリ読者達のためのハイブリッドパズルストーリーにまとめました。

 零時、明かりが突然消え、女性の悲鳴が響き渡る。
 誰も驚くことなく(笑)大喜利が始まる。shakaさんがマスターのサ店(注:喫茶店のこと)に集まったレッド(進井さん)、ビリジアン(蔓葉さん)、ピンク(七沢透子さん)、カレー大好きイエロー(INOさん)の四人が「推理戦隊MYSCON-Ⅴ」として怪人アンチミステリー(松本楽志さん)と戦う。で、怪人の攻撃で大喜利へ。
 なんというか年々素人離れしていくような……ツーか、前フリのはずの戦隊ものコントのほうが大喜利より面白かったような……そして戦隊よりも更にお*わ探偵が……。

 で、なにも見なかったかのようにライトノベル談義を継続。光文社に頂いていた『新・本格推理04』を市川憂人さんと根多加良さんに進呈(売名行為)。すると滅・こぉるさんがやってきて小一時間ありがとうございます、他人のフリしてゴメンナサイ
 続いて島田荘司全ネタバレ裏読書会にこっそり途中参加。作者本人という特権で大手を振って御手洗と石岡君のイチャイチャを書けるにも関わらず、『さらば遠い輝き』ではあえて遠回しの描き方を選択した点に、小説家としての島田荘司の力を見せつけられた思いです、というような読んでない人にはわからない話をしてました。
 さて、裏読書会が終わった後は、一人静かに瞼を閉じ、国内ミステリの行く末について考えていました(寝ていたとも言う)。
 で、六時半、部屋に戻って荷物をとってきて、大広間でお片付け。スタッフ挨拶とフクさんの衝撃的引退発表で幕を閉じたのでした。フクさんの「MYSCONは永遠に不滅です!」という言葉に大広間全員総立ちになったときの感動は忘れられま……て、嘘です嘘です。正しい情報はフクさんのサイト「UNCHARTED SPACE」04/03/14 の日記をご確認下さい。
 玄関に移動。靴を履き、さあ帰ろうとしたところで進井さんが突然『ミステリ系音楽会の夕べ』を販売し始めたので慌てて戻り購入。
 帰りの地下鉄で読み始める。おや、これは『ネジ式ザゼツキー』を意識しているのだろうか、と混濁した意識の中で思う私でありました。

 あ、政宗九さんにサインするの忘れました。ゴメンナサイ!!