付録

 既読ではあるが細部の記憶が不確かな読者の理解を助けるため、 以下の付録を作成した*1

早引表

章# 章タイトル p. 内容
第一部 1 墓地 19 ゲオルグ・ハルキスの葬儀。
2 捜査 24 遺言書を収めた鋼鉄箱が金庫から消えていることにマイルズ・ウッドラフが気づき、地方検事サンプスンを呼ぶ。
3 31 検事補ペッパーが到着、ウッドラフや秘書ジョウン・ブレットに事情を訊く。トマス・ヴェリー部長刑事らが到着、遺言書を捜索するがみつからない。
4 うわさ話 43 ペッパーがウッドラフに遺言書の内容を訊ねる。
5 遺骸 56 サンプスンが作戦会議を召集する。ミス・ブレットが金庫をいじっていたのを目撃したとペッパーが発言。エラリイが遺言書は棺の中ではないかと意見する。
6 発掘 69 出張していたジョン・ヴリーランドが戻ってくる。ハルキスの棺を発掘し、絞殺死体を発見する。
7 証拠 78 ペッパーが、絞殺死体はアルバート・グリムショーだと思いだす。ジョウン・ブレットが、一週間前にグリムショーが訊ねてきたときのことを証言する。木曜はグリムショー一人、金曜は顔を隠したもう一人の男がいた。各人に金曜の行動を訊ねる。
先週金曜日、ヴリーランド夫人、ウォーディス医師は二人で劇場に行ったとクイーン警視が見抜く。英語を理解できないデミー・ハルキスが、スローン夫人の通訳で十時頃には眠っていたと証言。気絶していたシムズ夫人から、十一時十五分前にパーコレーター等の茶道具を運んだことを訊く。
8 他殺か? 104 死体をいじっていたハルキス家の主治医フローストにエラリイが死亡推定時期やハルキスの死因に不審点は無いか訊ねる。
9 記録 112 各人に、ハルキスが死亡した土曜午前の行動を訊ねる。九時頃、デミーがハルキスの着替えを手伝った後、ペローズ精神科医のもとへ通院。九時十五分頃、打合せをしていたスローンがハルキスからネクタイが型崩れしてきたと聞く。十時十五分前、ジョウンがハルキスに頼まれた手紙を投函。十時十五分、死んでいるハルキスを発見したシムズ夫人の悲鳴を耳にする。
水曜の晩に金庫をいじっていた理由をクイーン警視が訊ね、ジョウンは証券類の明細書を作るつもりだったと答える。
エラリイが、土曜日以後は誰も書斎やハルキスの寝室のものを動かしていないことを確認する。ウォーディス医師がハルキスの眼疾について説明する。
10 前兆 140 パーコレーターに着目し、お茶をふるまうエラリイ。
11 予見 146 ハルキスの寝室で、着付けの日割表と、服飾品店から届いたネクタイをみつける。
12 事実 155 クイーン家の夕食。ハルキス邸の周囲について会話。グリムショーの死体は、過去にノックスが住んでいた空家に隠していたのではないか。
13 尋問 164 プラウティ博士から検屍結果を報告、出所後のグリムショーの行動について各人から証言を得る。
リッターが空き家を調べたがなにも発見できなかった。グリムショーは出所後、ベネディクト・ホテルへ。翌日酒場に女連れで現れる。
夜勤のクラーク、ベルが木曜夜にグリムショーを訪れた五人の客達について証言する。
十時ごろ、覆面の男がグリムショーと共に戻る。二人がエレベーターを待つ間に、別の男がグリムショーの部屋番号を訊ねる。約一分後、婦人がグリムショーの隣室は空いているかと訊ねられた。
それから十五分か二十分経ち、二人の男が別々に、グリムショーが宿泊しているか訊かれた。
14 書置 181 ハルキス邸で、木曜夜にホテルのグリムショーを訪れた者はいないか問いかける。クラークのベルが、スローン、デルフィーナ、ウォーディス医師を訪問客として指摘する(ウォーディス医師はジョウンと外出していたと否定)。
アラン・チーニーの失踪が判明する。ジョウンの寝室からアランの書き置きがみつかる。
15 迷路 196 ノックスが来訪する。エラリイがハルキス犯人説を開陳する。しかし、ジョウンが葬儀の日の午後は汚れていた紅茶茶碗はひとつだけだったと証言する。
ノックスが、ハルキスの死の前日に訪れた第三の男は自分だったと告白する。
16 パン種 220 ノックスが、ハルキスからダ・ヴィンチの絵画を買ったこと、それは盗品であるとグリムショーから恐喝されたことを打ち明ける。ハルキスからの手紙(ジョウンが投函を依頼された手紙)を見せる。警視に盗品所持を糾弾され、ノックスは昨夜、専門家に鑑定させたところ絵画は偽物と判明したと主張する。
エラリイが推理の誤りを反省する。犯人=偽の手がかりを作成できた者=グリムショーのパートナーだと結論する。デミーを呼び、色盲であることを確認する。
17 烙印 251 日曜日、バファロ空港でアランが逮捕される。
翌日、警察本部でアランを尋問する。クラークのベルに面通しさせるが、記憶に無いと証言される。
出所後のグリムショーが酒場で口喧嘩をした、ジェレマイア・オデル夫婦から事情聴取する。面通ししたベルが、オデルはホテルに来た人物だと証言する。
午後、サンプスン宛に、グリムショーの兄がスローンであることを密告する手紙が届く。
エラリイが、ノックスの空き家を探索することを提案する。
18 遺言 269 エラリイらがノックスの空き家を探索する。腐臭から、地下にあったトランクがグリムショーの遺体の隠し場所だったと判明する。炉から、遺言書の焼け残った断片を発見する。
19 摘発 276 ハルキス邸でスローンを尋問する。グリムショーが弟であること、ホテルで面会したことを認める。スローンはグリムショーのドアを見張っていたが、覆面の男がいつ帰ったのか気付かなかった。
ヴリーランド夫人が、葬儀の日の翌晩、墓地へ向かうスローンを目撃したと証言する。
スローンの部屋を捜査し、ペッパーが煙草箱の中から鍵をみつける。ノックスの空き家の、地下室の合鍵と判明する。
クイーン警視がスローン犯人説を唱えるが、エラリイは疑う。
20 精算 300 ハルキス美術館を訪れたエラリイたちが、スローンの死体を発見する。金庫からグリムショーの金時計を発見する。
現場にやってきたウッドラフ弁護士が、ノックスの空き家からみつかった遺言書の断片が本物だったと判明したことを報告する。
プラウティ博士が検屍し、弾丸が貫通していると判明する。画廊の壁から弾丸がみつかる。
エラリイがデスクの上にあったスローンの日記を確かめる。
21 日記 312 クイーン家で、スローン犯人説を疑うエラリイとクイーン警視との会話。スローンがグリムショーの兄だと密告したのは誰なのか。ダ・ヴィンチの絵画についてヴィクトリア美術館から返事が来ない。スローンの日記にはある婦人との情事が記されているが、自殺のことはなにも書いていない。
第二部 22 どん底 323 スローンの自殺に対するマスコミの反応。
23 物語 326 デルフィーナが警察本部を訪れ、スローンの無実を訴える。夕食でクイーン警視がそのことを話題にし、エラリイが興味をそそられる。
翌日、ハルキス邸に赴いたエラリイは、デルフィーナにホテルのグリムショーを訪れた理由を質問する。デルフィーナは、ヴリーランド夫人との浮気を疑っていたため、夫を尾行した。グリムショーの隣室を借りたデルフィーナは、スローンがグリムショーの部屋に入り、でてきてからハルキス邸へ帰るのを尾行した。スローンが自殺したとき、美術館へ電話をかけたことや、立ち聞きしていたことは否定。
ウォーディス医師は警察の禁足命令解除後、行き先も告げずに立ち去っていた。
アランとジョウンの口論を立ち聞きする。ジョウンから、自分はヴィクトリア美術館から派遣された人物だという告白を受ける。エラリイが、ノックスの秘書となることを提案する。アランから失踪の経緯を訊く。
ウッドラフ弁護士との会話で、ジョウンをノックスの秘書とするよう提案する。
24 証拠物 355 情報提供したいというノックスのもとをエラリイが訪れる。グリムショーに脅され千ドル紙幣を渡した。グリムショーはそれを金時計の裏蓋に隠したという。
ジョウンとタイプライターや絵画について会話。紙幣番号を打つことを頼むとジョウンが「これ“ナンバー”とペン書きで入れなければならないのよ」と漏らす。
警察本部で、金時計に紙幣が残っていること、紙幣番号が一致することを確認。
25 残滓 364 オデル夫妻の家を訪れる。足を洗ったとは知らずグリムショーはリリーと口論になった。妻からそれを打ち明けられたオデルは、ベネディクト・ホテルでグリムショーを脅した。
帰宅後、ジューナに、グリムショーの五人の訪問者のうち一人がわからないとぼやく。
26 光明 373 クイーン警視に呼ばれ警察本部へ。スローンが自殺したとき、ナシオ・スイサが美術館にいて死体の第一発見者になったが黙っていたのだという。
美術館でナシオ・スイサから事情聴取。ドアが閉まっていたことを知る。
クイーン家でサンプスンらと相談。エラリイがスローンの他殺説を主張する。
スローンが犯人ではなかったことをクイーン警視が記者会見で発表する。
27 折衝 389 サンプスンの事務所で、ノックスとダ・ヴィンチの絵画について会談。絵画の提出を要求するが、ノックスは断る。
28 恐喝 399 ノックスから電報。ノックスのもとへ、約束手形の裏に書かれた恐喝状が届いたという。鑑定の結果、スローンとグリムショーが兄弟だという密告の手紙と、同じタイプライターによるものだと判明する。
サンプスンの事務所で会議、ペッパーがノックス邸に張り込むことになる。
29 収穫 406 ノックス邸に届いた新しい恐喝状をペッパーが警察本部に運ぶ。約束手形の残りの半分で、三万ドルを要求する内容だった。
鑑定の結果、前回とは異なるタイプライターによるものと判明する。ただし、打ち手は同一人物と思われるという。エラリイが数字の3の打ち直しを指摘する。
打合せのためノックス邸へ。ノックスが絵画の提供を認める。
エラリイがジョウンに、使用人のことを訊ねる。
警察本部に戻ったエラリイが、夜九時にノックス邸へ集合することを提案する。
30 クイズ 422 ノックス邸に集まったエラリイたち。エラリイの指示で、盗難防止装置が毀れていることがわかる。ノックスが、鏡板の向こうに隠していた絵画を盗まれたと主張する。
読者への挑戦。
31 決着 427 エラリイがコイルに隠されていた絵画を披露する。ノックスはそれを模写だと主張する。美術批評家トピー・ジョーンズが鑑定するが、真贋は本物と比較しなければわからないという。
エラリイが、ノックスを逮捕する。
32 エラリイ方式 439 警察本部の大会議室でエラリイがノックス犯人説を説明する。クイーン警視が、動機が不明なこと、恐喝状は使用人を共犯者とすれば打てることを指摘する。
33 意外な出来事 457 電話の前で待機するクイーン父子。夜十二時過ぎに連絡があり、ノックス所有の空き家へ向かう。撃ち合いになり、ペッパーが死亡する。
34 真相 465 エラリイがクイーン家でジョウンらにペッパー犯人説を説明する。

日付順出来事一覧

1926.09.28(火) グリムショーがシンシン刑務所を出所、ベネディクト・ホテルへ。
1926.09.29(水) グリムショーが西四十五丁目の酒場に肥った金髪女リリー・オデル(旧姓モリスン)と訪れる。
1926.09.30(木) 夜九時頃、グリムショーがハルキス邸を訪れる。
真夜中、ウッドラフのもとにハルキスから新しい遺言書の草稿を届けるよう電話があった。
ベネディクト・ホテルに泊まるグリムショーのもとへ五人の客が個別に訪れる。
 ・一人目:覆面をした男。
 ・二人目:スローン。弟のグリムショーを訪ねた。
 ・三人目:デルフィーナ。夫を尾行。隣室が空いているか質問。
 ・四人目:ジェレマイア・オデル。アイルランド人の大男。
 ・五人目:ウォーディス医師。
1926.10.01(金) 正午前、ウッドラフが届けた遺言書をハルキスが金庫に収めた。
夜、ジョウンはハルキスから客が二人来ると知らされる。
十一時、グリムショーと、顔を隠した男がハルキス邸を訊ねる。
(検屍結果では)土曜日早朝までにグリムショーが殺害される。
1926.10.02(土) 朝、ハルキスが死亡。
1926.10.05(火) ノックスが大統領の呼出で葬儀に参列できなくなる。
ハルキスの葬儀後、遺言書の喪失に気付く。
1926.10.06(水) 邸を見張っていたペッパーが、金庫をいじるジョウン・ブレットを目撃。
ヴリーランド夫人が夜十二時過ぎ、墓地へと入るスローンを目撃。
1926.10.07(木) サンプスンが作戦会議を召集し、エラリイが遺言書は棺の中ではないかと意見する。
1926.10.08(金) 朝、ハルキスの棺を発掘し、絞殺死体を発見する。ハルキス死亡前後について各人から事情聴取。パーコレーターに着目したエラリイがお茶をふるまう。
クイーン家の夕食。ハルキス邸の周囲について会話。
夜十一時十五分、クラブへ行くと言ってでかけたアラン・チーニーが失踪。
1926.10.09(土) プラウティ博士から検屍結果を報告、出所後のグリムショーの行動について各人から証言を得る。
ハルキス邸で、木曜夜にホテルのグリムショーを訪れた者はいないか問いかける。アラン・チーニーの失踪が判明する。
ノックスが来訪し、エラリイはハルキス犯人説を開陳するがジョウンの証言に否定される。
1926.10.10(日) バファロ空港でアランが逮捕される。
1926.10.11(月) 警察本部でアランを尋問する。オデル夫妻から事情聴取。
グリムショーの兄がスローンであることを密告する手紙がサンプスン宛に届く。
夕方、エラリイらが、ノックスの空き家を探索する。ハルキス邸でスローンを尋問。スローンの部屋を捜査し、暖炉の灰の中から鍵をみつける。
クイーン警視がスローン犯人説を唱える。美術館を訪れたエラリイたちが、スローンの死体を発見する。
1926.10.12(火) クイーン家で、スローン犯人説を疑うエラリイとクイーン警視との会話。
1926.10.19(火) デルフィーナが警察本部を訪れ、スローンの無実を訴える。夕食でクイーン警視がそのことを話題にし、エラリイが興味をそそられる。
1926.10.20(水) ハルキス邸に赴いたエラリイがデルフィーナと会話。アランとジョウンの口論を立ち聞きする。ウッドラフ弁護士に、ジョウンをノックスの秘書として推薦する。
1926.10.22(金) 情報提供したいというノックスのもとをエラリイが訪れる。ノックスがグリムショーに脅され渡した千ドル紙幣が、警察本部に補完されていた金時計からみつかる。
1926.10.23(土) オデル夫妻の家を訪れる。オデルからホテルのグリムショーを訪れた経緯を訊く。
クイーン警視に呼ばれ警察本部へ。ナシオ・スイサがスローンの死体の第一発見者だった。美術館でナシオ・スイサから事情聴取。ドアが閉まっていたことを知る。
クイーン家でサンプスンらと相談。
1926.10.24(日) スローンが犯人ではなかったことをクイーン警視が記者会見で発表。
1926.10.26(火) サンプスンの事務所で、ノックスとダ・ヴィンチの絵画について会談。
1926.10.28(木) ノックスから電報。ノックスのもとへ、約束手形の裏に書かれた脅迫状が届いたという。
1926.11.05(金) ノックス邸に届いた新しい恐喝状をペッパーが警察本部に運ぶ。
打合せのためノックス邸へ。エラリイがジョウンに、使用人のことを訊ねる。
夜九時、ノックス邸に集まったエラリイたち。ノックスが、絵画を盗まれたと主張する。
エラリイがコイルに隠されていた絵画をみつけるが、ノックスによれば模写だという。美術批評家トピー・ジョーンズが鑑定するが、真贋は本物と比較しなければわからないという。
エラリイがノックスを逮捕する。
1926.11.06(土) 警察本部の大会議室でエラリイがノックス犯人説を説明する。
電話の前で待機するクイーン父子。夜十二時過ぎに連絡があり、ノックス所有の空き家へ向かう。撃ち合いになり、ペッパーが死亡する。
1926.11.07(日) エラリイがクイーン家でジョウンらにペッパー犯人説を説明する。

推理過程図

ハルキスのネクタイからの推理
紅茶茶碗とパーコレーターからの推理
スローン犯人説とその瓦解
ノックス犯人説とペッパー犯人説