事件の翌々日。朝八時、第二図書室。
 俺の携帯電話に、スチャからのメールは届かなかった。
 届いたのは、別のところだった。図書準備室のパソコン、図書班の専用メールアドレスに、添付ファイルつきのメールが届いていた。
「少なくともこれで」
 テキストファイルをスクロールさせながら、水影は静かに言った。
「スチャが犯罪者なのは確定ね。盗聴なのか、不正アクセス禁止法違反なのかは知らないけど」
 確かに、それは疑う余地がなかった。
 添付ファイルには、昨日の事情聴取で各自が証言したことがまとめられていた。
 それだけじゃない。殺害現場の見取り図、聞き込みで得た情報、検屍結果。簡潔に編集されているが、不正な方法でなければ得られない情報ばかりだ。
「スチャって人が犯人なら、これ、信じられないんじゃない?」
「たぶん、そこが花房君の言ってた、プライドってヤツだと思うよ」
 未緒と湯船の会話に、俺は黙ってうなずく。
 スクロールしていた水影の手が、とまった。そこには名前の一覧と、なにやらマルバツの記号があった。
「花ちゃん」
「……なんだ、囲夫」
「ごめん。やっぱ昨日の話、なし」
「なんのことだ?」
「花ちゃんが探偵役をするって話」
 それは、アリバイのまとめだった。
 被害者の死亡推定時刻に、居場所が確かめられているかどうかがまとめられていた。
「探偵は」
 死亡推定時刻にアリバイのない人物は、ただひとり。
「僕がやるよ」
 未緒だけだった。