経緯
そもそもの始まりは、第七回文学フリマだった。
某所の某日記で、某編集長にささやかれた――次は美少女名探偵を書きましょうよ。
びせうぞたんてい……ウーム、まあ面白そうだけど、でもなにかひねりが欲しいな。最近のマンガはなんか女装ブームだし、いっそ美少○探偵なんていいかもな……などとネタを広げているうちに、なにやら異形のモノが形をとりはじめたのでありました。
まあ、これだけなら犯人当てにはしなかったわけで。
ひとつはやはり、安楽椅子犯人さんの『湖岸の盲点』だった。夏風邪で体調不良のおり、寝床でうなりながら頭を巡らせたのが懐かしい。
そして綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状『安楽椅子探偵と忘却の岬』。近田鳶迩さん宅で熱く推理を語り合ったのが懐かしい。いまにして思えば嵌められた気がしないでもない。
とまあ、こういう経緯で、なんとなく私のなかで犯人当て熱がぶりかえした。美少女探偵をテーマに、なんか創ってみよう。そうして半年かけて生まれたのが本作でありました。
ちなみに、なぜ学園ミステリになったのかというと。
二年前の犯人当てのテーマは「新本格ムーブメント」だったので、新本格を満喫した三十~四十代を意識した作品でした。なので、今度は「新本格以降」をテーマに若い世代を書こうかなと。
米澤穂信チックな「ミステリ大好きって素直に言えない」当世事情を盛り込んでみたのですがいかがだったでせうか。
反省点
応募解答、MYSCON10での反省会でご指摘頂いた反省点は、以下の通り。
- 長すぎる。とにかく長すぎる。
- 未緒が手にしていた本が米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件』だったというのは知らない人にはわかりようがない。犯人当てとしてはこの手のネタは控えるべき。
- 「01/19 [花房視点] 昼寝部へようこそ」で、花房は囲夫から「ミーちゃん」としか聞いていないのに、花房は地の文で「未緒」と呼んでいる。
- スンマセン! ケアレスミスです!
- 囲夫と未緒を見分ける条件として、声が重要だった。
そのことの記述が弱く、印象に残らなかった。もっと強調すべき。 - 殿村耕作も特別教室棟に入ったのだから重要な容疑者のはず。
しかし殿村の行動について記述が少なすぎる。- 補足しておきますと、死亡推定時刻の間、
杏たちがずっとバドミントンをしていて、
そこへ殿村がやってきて説教しましたので、
殿村は美術準備室に入れない=アリバイがあります。
- 補足しておきますと、死亡推定時刻の間、
- 行動表には生徒八人のみで、教職員についての記述がない。
いっそ明示的に犯人候補を生徒八人に絞ってよかったのでは。 - スチャからの情報は信頼しがたい。
警察側の視点をとりいれるか、冒頭のルールのような形で作者が直接的に保証すべき。 - 施錠に南京錠が使われるという時点で、南京錠のすり替えが容易に思い浮かんだ。
真相の驚きを重視するなら、このようなショートカットはなくすべき。 - 死体はトイレに隠した可能性もありえるはず。
不特定多数の人物が来るから、というだけでは隠さない理由として弱い。
(記述はないが)屋上に隠すという手もありそう。
こういった細部の条件が不明確。 - まっとうな犯人当てとしては正解率が低すぎる。
- 応募7通に対し、正解1通でした。約14%。
やっぱり、2割はいくべきかなと思います。
- 応募7通に対し、正解1通でした。約14%。
エー、もう、いろいろスンマセン! m(_ _)m
補足
MYSCON10では、近田鳶迩さんによる「犯人当てを作ろう!!」という凄い企画がありました。
文字通り「あ~ら不思議! ENJI☆メソッドさえあれば誰にでも犯人当てが作れるよ!」というスペシャル企画。で、そのENJI☆メソッドとはなにかというと。
以上の四点を、見かけの状態と真相とでそれぞれ用意するというもの。細かく説明しだすとスゴク長くなるので略。
これ、確かに『玖乃杜モノクローム』も当てはまるんですね。問題編が終了した時点では、以下の状態でした。
橘教師が理科準備室で殺害されていた。アリバイの面で、未緒以外は誰にも犯行は不可能だった。恐らくアリバイトリックがあって、未緒以外の誰かが真犯人なのであろう……というのが見かけだったわけです。
ところが、いろんな手がかりから双子の入れ替わり、携帯電話の時刻の改ざんを見抜くと、次の問題に変わります。
どうやって二重の逆密室から写真立てを盗みだしたのか。この謎を解くことで副次的に殺人犯もわかるという構成でした。
謝辞
貴重なアドバイスを頂いたのりりんさん、近田鳶迩さん。解答編配布や反省会の場を提供頂いたMYSCONスタッフさん。そしてなによりも、この作品に挑んで頂けた名探偵の皆様に深謝いたします。
ごめん! 次は絶対、四十枚以下にするよ!