定時連絡

帰宅する人々の集う駅前に
サックスとギターと歌い手が
夕暮れのリズムを響かせて
大きな半円を描く人々が
怯えながら耳を傾けている
堪らない気持ちで早足になって
泣きたい気持ちで私は改札に急ぐ

人生を美しいドラマにしてはいけない
私たちは救いがたく俗悪です

明かりを消した部屋の中から
窓越しに見慣れた街の明かりを眺めて
安売りされた感情を買い占める
幸福な人々の列を見下ろす
ここにはなにもなく
そこにもなにもない

もうすべてが手遅れだと知っているのに
私たちは両目を開いておはようと言う