スローモーション

さあ、窓を開けて霜月の雨風が部屋を潤すのを待とう
蛍光灯を叩き割り、破片をばらまいて禁忌の領土を広げよう
さあ、カーテンを閉ざしガスコンロに火を灯そう
暗闇に浮かぶ青白い炎に祭壇の干からびた供物を投じよう

あなたの傷を硝子玉に映して飲みこめたなら
それだけでわたしは唯一無二のわたしでしょう
心に咲く花を枯らして破片を唇から吐きだせば
あなたにもわたしの色がわかるでしょう

たとえばそれは縁石にとまる目の見えない鳩であり
名も知らぬ草花が刈りとられ積み上げられた冬の野原であり
手のひらからこぼれ落ちていく水のように
とりとめもなくつづくスローモーションの連鎖なのです