早引表

             
  榊林銘『毒入り火刑法廷』早引表 !!作品内容に触れています!! !!閲覧注意!!
  榊林銘『毒入り火刑法廷』(光文社/2024年2月)に基づき作成した。
  No. p. あらすじ 補足
  1   3 雲の上を箒で飛んでいた魔女(カラー)が、航空機のプロペラに巻き込まれ大地へ落ちていく。 眼鏡をかけた少女(エリス)に声をかけられ、目を覚ます。  
  2 4 カラーが警察署の牢から護送車へ。車窓から火刑法廷の建物を見上げる。  
  3   5 魔女についての説明。 〈客船の魔女〉事件(モーリスリンク事件)をきっかけに火刑法廷が生まれた。  
  4   7 カラーが護送車から降ろされる。カラーは本当に魔女。  
  5 7 オペラがミチルと共に火刑法廷へ。記者たちの質問に答える。  
  6   9 オペラが法廷に入る。弁護人の姿がない。開廷を告げる鐘が鳴る。 罪状認否。魔女であることを認めるか問うも、カラーは答えない。  
  7   12 運送業者パトリック・ウィルソンの証言。 ヴェナブルズ邸はプラッツ・マンションの三階にある。 事件の夜、九時の鐘が鳴ってから十分ほど過ぎた頃、空き部屋の扉から箒の先端が出てきた。ハロルドが空き部屋に入った。悲鳴が聞こえ、空き部屋に入るとカラーだけがいた。ベランダ越しに地面を覗くとハロルドの変わり果てた姿があった。  
  8   16 アルマジャック記念公会堂の清掃人グラディス・ミドルトンの証言。 事件の夜、九時の鐘が鳴ったとき、カラーと公会堂の近くでぶつかった。 つまり、およそ十分で公会堂から空き部屋へ移動したとオペラが説明する(箒で空を飛びでもしないかぎり、そんなことは不可能)。 ミドルトン夫人は今朝、公会堂の掲示板のカバーグラスが割られており、手を怪我した。 ⇒No.24 毒羊が証拠品を捏造するためだった。
  9   18 メリダ・カーソンが証言台に立つ。 エリスは傍聴席で、母親が証言するのを眺める。  
  10 19 エリスの回想。公会堂の二階にある物置部屋にカラーを匿っている。おたがいの名前を名乗る。  
  11   21 エリスの回想。食事の場でハロルドがメリダに仕事のことを語る。 〈ウィッチフォードの魔女〉の話題。写真の中の魔女はカラーに似ている。  
  12   23 エリスの回想。物置部屋でカラーに学校で仕入れた食事を差しだす。 〈ウィッチフォードの魔女〉は自分のことだとカラーが認める。  
  13 26 メリダ・カーソンの証言。 〈ウィッチフォードの魔女〉に関する特ダネを摑んだとハロルドは言っていた。 報道してほしくない秘密をもみ消すことがカラーの動機だったかもしれないとオペラが指摘する。 メリダもウィルソンと一緒に、魔女が空き部屋から出てくるのを目撃した。そのときエリスは自室にいた。騒ぎを聞きつけ廊下へ出たが、メリダが追い返した。  
  14   28 ステラ・バイコーン警部の証言。 カラーは窓から(空飛ぶ箒で)侵入したのかというオペラの問いに、次のように見解を答える。玄関から入った可能性はない。運送業者が逐一施錠し、事件前後は使用人が玄関を掃除していたから。事件時はベランダが施錠されていた。ウィルソンが施錠するのをメリダが見た。外壁を上ったような跡は確認できなかった(したがって空き部屋には、箒で飛んできて窓から入ったとしか考えられない)。  
  15   30 陪審員の判断が下る。十二枚中九枚が『魔女』を示す。 議論終了時に過半数を占めれば火刑に処されるとオペラが説明する。  
  16   31 弁護人の毒羊が姿を見せ、反対尋問を始める。 屋根の上からロープを伝って下りた可能性はないか。 屋根には雪が積もり、誰かが足を踏み入れた痕跡はなかったと警部。 では、上階の部屋の窓から下りてきた可能性は? それはありえないことを示すため、警部はオペラにケアリー夫人の証言を求める。  
  17   33 四階の住人であるエルザ・ケアリーの証言。 事件現場の真上は子供部屋で、出入りした者などいなかった。  
  18   34 ではベランダから侵入したと毒羊が主張する。ベランダを施錠したのは事件の直前、その前に階段の踊り場の窓から三階のベランダに飛び移れば空き部屋に入れたはず。 ウィルソンが施錠時、空き部屋に誰もいないと確認したとオペラが反論。 机の下に隠れてやり過ごしたのだろうと毒羊が答える。ウィルソンも、その可能性があることを認める。 それでも不可能だとオペラが反論。施錠したのは九時前、九時に公会堂の路地にいたカラーは侵入できない。 侵入者はカラーではなく、別人だと毒羊が主張。その人物を証人として呼ぶ。  
  19   35 ジョン・カレッジの学生、ダレカ・ド・バルザックの証言。 ダレカはコソ泥で、空き部屋に侵入したものの何も盗らずに逃げ出した。 ダレカは傍聴席では揚げ物を食べていた。証言台では揚げ物の紙袋を被り、顔を隠している。 ⇒No.34 本当はパブにいたことを隠すためだった。
  20   36 オペラの反対尋問。わざわざ三階に侵入した理由は。 消去法だと毒羊が答える。一階の店舗は繁盛していない、四階は雪に足跡が残る、二階の部屋はパーティーに興じていた。 バイコーン警部が、ダレカは有名な非行娘だとオペラに教える。  
  21   38 毒羊がヴィクトゴー・ルールを説明する。魔女は箒がなければ飛行できない。  
  22   39 ヴェナブルズ家の使用人、アネット・スミスの証言。 箒はヴェナブルズ家のものだと証言する。物置に戻したはずがなくなっていた。 毒羊がアネットの指紋を採取、箒の指紋と一致することをバイコーン警部が確認する。箒は空き部屋に置き忘れられていたもの、カラーは使えないと毒羊が指摘する。アネットは事件当日が初勤務であり、指紋がつく機会はそれまで無かった。 カラーが使ったのは別の箒だろうとオペラが抗弁する。その場合、カラーの箒はベランダから落とし、誰か持ち去ったはず。  
  23   43 パブの店員、ガイ・ハーディングの証言。 警官が来るまで誰も死体には近づかなかった(箒など無かった)。 川に捨てたのではとオペラが反論するも、距離があり無理だと毒羊が否定する。 二回目の陪審員の判断。『魔女』は十二枚中五枚に減る。  
  24   44 アネットにオペラが質問。黒フードの女が話を聞きに来たという。毒羊の部下か。 ミドルトン夫人にオペラが質問。路地でぶつかったときカラーは手ぶらだった。 オペラが毒羊の罠を見抜く。指紋はアネットではなく、ミドルトン夫人のもの。公会堂の掲示板のカバーグラスが割られていたのはミドルトン夫人の指紋を手に入れるためだった。  
  25 48 オペラの回想。事件の翌朝、プラッツ・マンションの前。 警察用車両からロバート少年とその母親が降りてくる。母子と入れ替わりに玄関からバイコーン警部が現れる。警部と三階へ。窓の直下に足跡がある。窓の真下から外壁に沿って東へ続いている。 バイコーン警部が説明する。足跡はロバート少年が残したもの。家出しようと四階からロープを垂らし、外壁を降りたという。八時半から九時の間、もっと早いか遅いかもしれない。外壁に少年が降りた痕跡はあったが(カラーが)上った痕跡はなかった。 空き部屋の扉はドアノブに手をかけただけで動いてしまう。壊れていて、ノブのボルトの高さがずれているとバイコーン警部が説明。 ⇒No.31 ドアノブをまわさなくとも、カラーは扉の上辺を摘まめば開けることができた。
  26 52 オペラが上記のことを証言。 毒羊が次のことを指摘する。ロープは窓の中央に垂れており、かつ窓は横幅が狭い。もしカラーが窓から入ったならロープに触れざるを得ない。  
  27   54 アンデルセン・スタニスワフの証言。 八時四十五分頃、パーティールームの窓辺で、ロープが垂れ下がりロバート少年が降りてくるのを目にする。それからハロルドが転落する九時十分までロープがぴくりとも動かなかった。 三回目の陪審員の判断。『魔女』のパネルは十二枚中二枚に。  
  28   56 オペラの反対尋問。ロープ一本くらい避けられたのではと主張する。窓の横幅からして無理だとアンデルセンに否定される。 猫に変身すれば可能ではないか? 毒羊が、ヴィクトゴー・ルールによれば二つの魔法を同時には発動できないと指摘する。仮に変身できても、箒がロープに触れたはず。そもそも魔女にはロープを揺らさないよう苦心する動機がない。 アンデルセンのもとにも黒フードの女が話を聞きに来たという。オペラは有効な反論を思いつけず、三十分の休憩に入る。  
  29 59 カラーが毒羊に声をかける。毒羊に鎮静剤だと偽って飲まされた錠剤でカラーは声が出せなかった。 ロープのカラクリは脆弱で、遅刻する毒羊はカラーの口を封じる必要があった。  
  30 61 控室に閉じこもるオペラ。扉の下の隙間に灰色の便箋が挟まっている。 ウィルソンを呼ぶ。空き部屋から見えた先端とは、箒の穂先のほうだという。  
  31   64 法定へ戻ってきたオペラが、カラーは廊下側の扉から入ったと主張する。ウィルソンが目撃したのはカラーが空き部屋へ入る姿だったなら、箒の穂先のほうが見えたという証言と整合する。 ウィルソンが、扉は室内から開かれたと指摘する。それに対しオペラは次のように反論する。カラーはやはり廊下側から扉を開けた。姿が見えなかったのは、廊下の天井の梁の影に浮いていたから。それをウィルソンは室内から開けたものと誤解した。カラーは(ベランダではなく)リビングの窓から侵入し、空き部屋へ隠れようとした。そこをリビングからハロルドが目撃した。  
  32 67 エリスの回想の続き。 エリスは明後日、ヴェナブルズ邸に引っ越すことを打ち明ける。公会堂の掲示板に〈ウィッチフォードの魔女〉の写真があった。カラーは近いうちに街をでていくつもりだという。  
  33   69 エリスの回想。二日後、ヴェナブルズ邸へ引っ越した。箒で飛んできたカラーをリビングの窓から迎え入れ、別れの挨拶を交わす。 ハロルドにピアノをどかすよう命じられた運送業者の男たちがリビングに入ってくる。空き部屋のベランダから逃げるようカラーを促す。天井の梁に身を隠してカラーが空き部屋の扉を開ける。それをハロルドが見咎め、二人は空き部屋の中へ。 つまり、オペラの推理は正しかった。ただし空き部屋でなにが起きたかまではエリスも知らない。 ⇒No.188 アンデルセンが空き部屋で起きたことを語る。
  34 72 オペラの要請で、ガイ・ハーディングが再び証言台に立つ。 傍聴席では顔をさらしていたダレカは、なぜ証言台では紙袋で顔を隠したのか。ダレカの非行のひとつに飲酒があった。事件の夜、ダレカはパブにいたのではないか? ハーディングはそれを認める。 したがってダレカはヴェナブルズ邸に侵入などできない。カラーはベランダではなく、リビングから侵入したと考えられる。  
  35   76 エリスの背後に、いつの間にか黒フードの女が座っている。お前がカラーの友人だとは知られていない、被害者に近しい立場と思われている。友人を救いたいなら、お前が身代わりになれ。 四回目の陪審員の判断。『魔女』のパネルが十一枚、最後の一枚が捲られる前にエリスが立ち上がる。  
  36   78 エリスの証言。空き部屋のベランダの鍵を開けたのはエリスだった。荷解きが終わった後、空き部屋にいた。廊下のほうから足音が聞こえ、思わず机の下に隠れた。ウィルソンが空き部屋を去った後、ベランダの鍵を開けて自室に戻った。 くわえて、オペラの主張する侵入経路は使えない。運送業者の人たちがピアノをリビングへ運び入れ、窓を塞ぐように置いた。よって窓からは入れなかった。九時を過ぎたころ、ハロルドの指示でピアノを窓から離した。ピアノは二人がかりでようやく動かせる代物であり、少なくとも一人では無理。  
  37 81 エリスの回想。三週間ほど前、粉雪の舞う闇夜。 母親が突発的にでかけ、自宅に入ることができなかった。雲を割ってカラーが落下してきた。  
  38   81 エリスの回想。エリスが呼びかけ、カラーが意識を取り戻す。 自分も魔女だとエリスが打ち明ける。  
  39   82 エリスの回想。五歳の誕生日を迎えた翌日、初めて空を飛んだ。魔女であることを秘密にするよう父と約束する。  
  40   83 エリスの回想。エリスは梱包されたピアノに箒の柄をかけ、動かした。  
  41 84 最終弁論。オペラはピアノに関する証言を説明できない。 陪審席のパネルが開く。カラーは魔女とは認められない。火刑法廷が閉廷する。  
  42   85 法廷脇で毒羊が黒フードの女(バッドマ嬢)と会話。  
  43   88 シシリー・アルマジャック市議が、公会堂に隠れ住んだことでカラーとエリスを叱責する。公会堂に住み込みで働くよう提案する。レストランの人手が不足しているという。  
  44   92 火刑法廷から一週間後、公会堂の物置部屋に住むカラーをエリスが訪れる。毒羊は何者だったのか話していると、どこからか少女の声。  
  45   93 声に従い三階テラスへ。黒猫がダレカだと名乗る。黒フードの女もいる。ダレカと黒フードも魔女だという。毒羊と知りあった経緯をダレカが説明する。火刑法廷を乗り切るため助け合うこと、魔女同盟を結ぶことを提案される。 エリスは猫に変身できない。 ⇒No.119 後に変身できるようになったことが明かされる。
  46   98 エリスがプリンス・ジョン・カレッジに登校する。教室内の空気がよそよそしい。  
  47   99 中庭を横切ろうとして、エリスは魔女だと噂しているのを耳にする。 廊下で、学生服を着たダレカに話しかけられる。何者かが新聞社に、エリスが魔女だという説を投書したらしい。  
  48   102 エリスがダレカと一緒に東岸地区へ。ダレカが、反魔女派に命を狙われた魔女としてシュノの名前を挙げる。  
  49   104 ハロルド事件以降、遺産が手に入らず母娘は東岸の集合住宅に移り住んでいた。 シュノについての説明。歌手で、魔女であることを公開し研究に協力している。 母に、あなたは魔女ではないよねと問い詰められる。エリスは否定するが、見抜かれる。  
  50   106 市民公園のベンチでエリスは途方に暮れる。記者たちに声をかけられ逃げ出す。 飲食店に引きずり込まれる。助けてくれたのはアンデルセンだった。家に帰れないエリスに、友達を頼るようアンデルセンが助言する。  
  51   109 カラーのもとをエリスが訪れる。二人で夕食を囲む。  
  52   109 同じベッドで目覚める二人。朝食を囲みながら会話。 『晩餐会』と印字されたポスターに気づく。三月にシュノが公会堂で歌うという。  
  53   112 共同生活が始まる。二月半ばの日曜日、エリスが物置部屋を掃除しているとダレカが訪れる。親からくすねたという金をダレカからもらう。  
  54   113 その日の午後、エリスは変身魔法を練習する。変身魔法をダレカは黒フードから教わった。アンデルセンは知り合いなのかとエリスが訊くが、ダレカは知らないという。 カラーが姿を見せる。試してみると、カラーは黒猫に変身できた。 普段の黒フードはまるっきり別人だという。 ⇒No.102で黒フードの女(バッドマ)=ビーだと明らかになる。
  55 117 過去の場面。使用人のアクトンがカラーのもとへ食事を運ぶ。カラーという名前は、アクトンが少女につけた愛称。 アクトンの恋について話そうとするカラー。雇い主はカラーを解放する気がないため、将来のことは話せない。  
  56 119 三月の初め、カラーに誘われて公会堂のレストランへ。 店から出る。二人の中年婦人の会話をエリスは耳にする。ウィッチフォードのベル家でアクトンの葬式があったという。 月光に照らされ、不気味な笑みを見せるカラー。 ⇒No.188 アンデルセンの考えでは、アクトンの自殺から、自分は罰せられるべき人間だとカラーは思っていた。
  57   122 翌朝、ちょっと出かけるという書き置きを残してカラーが姿を消している。 貧民区へ向かったエリスは、ダレカに声をかけられる。  
  58   123 ダレカと話し合い、一緒にウィッチフォードへ行くことに。  
  59   123 列車でウィッチフォードに到着。駅員によれば、黒猫が列車から飛び降りたという。 駅の待合室で、老夫婦(元村長のガストン・ブレークとその妻イブリン)にベル家の事情を聞き出す。アクトンは地元の名家であるリード家の屋敷で使用人として働いていた。〈ウィッチフォードの魔女〉を匿っていたという噂から婚約者と破局、自殺したという。 リード家を通り過ぎようとして、不気味な黒猫が家の中をみつめていたという会話が漏れ聞こえる。  
  60   126 ウィッチフォード教会での葬儀に、黒猫がいるのに気づく。人の姿に戻ったカラーは「帰ろう」としか言わない。  
  61   127 帰りの列車が丘陵のふもとにある大きな街の駅に停車したとき、エリスが声を漏らす。アルマジャック市議のそばにいた女の人(秘書)をプラットフォームに見かけた気がした。 列車が動き出し、ダレカがロジャーに声をかけられる。ロジャーの取り巻きが、最後尾の特急車両にシュノが乗っているらしいと話す。 市議の秘書はシュノを迎えに来たんだなとダレカが考えを述べる。会ってみたいと言ってカラーがコンパートメントを飛び出す。  
  62 129 特別車両で『法医学』という題字の書物の頁を捲るシュノ。警備員のブルームと押し問答するカラーを通してやる。 どんな気持ちで魔女であることを明かしたのかというカラーの問いに、歌と魔法のショーでお金を稼がなくてはならなかったからとシュノが答える。人の心を操る魔法は声の届く範囲にいる人間にしか影響しない(だから魔法ではなく実力で名声をつかんだはず)と弁護するカラーに、言葉が尻すぼみになるシュノ。 魔法の研究に協力した理由の一つとしてシュノは”時には運命に抗ってみたり”とウィンクする。シュノの顔を眺めるうちにカラーが、あ、と口を開ける。 ⇒明確な記述はないが、シュノ=毒羊だとカラーは気づいたのではないか。
  63 133 エリスとダレカも特別車両へ入ることを許される。 ダレカが、自分たちは魔女であることを明かす。魔女同盟に誘うが、シュノは断る。魔女であることを公言していからメリットがない。 突然、窓から黒フードが飛び込んでくる。爆弾が爆発し、前の車両と切り離される。シュノが数本の箒を取り出し、エリスは空を飛んで窓から逃げ出す。 黒フードは、警備員が妙な鞄を連結部に仕掛けるのを見て、助けに来たという。列車はソドベリー・クロス駅で止められるから、乗り換え客に紛れて逃げれば良いとシュノが提案する。  
  64   139 夜の闇に忍ぶように箒で飛行する。黒フードは箒を分解して鞄に入れ、持ち歩いているという。 カラーが、本当の名前はシャーロット・リードだとエリスに明かす。 ウィッチフォードの過去について説明。五歳のときカラーは魔女だと疑われた。両親はカラーが病死したと偽り、地下室に匿った。世話係のアクトンが置き忘れた箒で、飛べることに気づいた。地下から抜け出し、村の人に見つかった。  
  65   142 ソドベリー・クロス駅ではバイコーン警部や報道関係者が列車の到着を待ちわびていた。 窓からホームを覗き込むダレカ。駅員(ジャイル・バイソン)が窓の方へ近づいてくる。外通路にいるのかと問う駅員を黒フードとダレカがごまかす。駅員によれば、足場が腐食しているため外通路は立ち入り禁止だという。 エリスが窓からホームを覗くと、鐘の音が鳴り、壁時計が午後九時を指している。外通路をホームへ回り込む。振り替え列車を待って、エリスは公会堂へ帰る。  
  66   144 翌日の放課後、エリスが校内の渡り廊下を歩いていると掲示板に人だかりがある。新聞記事が張り出され、女子生徒たちがシュノのことを話す。当てこすりをされたエリスの肩をダレカが叩く。 女性教諭がダレカに、アルマジャック理事が呼んでいると告げる。  
  67 146 ダレカが理事室を訪れるもアルマジャック市議はいない。禿げ上がった中年の男に、公会堂の執務室に来るよう言伝される。 公会堂に来て、クローク前を通り過ぎようとしてアルマジャック市議の秘書に見咎められる。背後からアルマジャック市議が現れ、ダレカは姪だから心配に及ばないと言う。 公会堂の裏口でダレカが靴の泥を落としていると、大型トラックが路地へ突入、壁に擦れる音がする。 ⇒No.111以降の議論に関わってくる。 階段裏の側廊から塔へ続く扉を開けようとするも、何かにぶつかって開かない。 ⇒No.89 扉の向こうに観葉植物(アレカヤシ)の鉢が置かれていたため。
  68   148 アルマジャック市議と執務室へ。 ダレカの父、スティーブンが経営する海運会社が麻薬密売に関与しているという匿名の手紙が届いたという。スティーブンが検挙されるなら、ダレカを養子に迎えることを考えている。会話の内容を市議が手帳に書きつける。 ドアが少しだけ開かれ、なにか投げ入れられる。白煙が噴き出し、ダレカは倒れる。黒い覆面で顔を隠した侵入者を目にするが気を失う。  
  69   151 ダレカの生い立ち。いつか破滅が訪れるという不安を抱えていた。  
  70   152 倒れた花瓶から滴る水で、ダレカが意識を取り戻す。 執務机に突っ伏したアルマジャック市議の背にナイフが突き立てられている。人を呼ぼうとするが、扉は鎖と南京錠で封鎖されている。隅の天井板が剝がれており、ダレカは猫に姿を変えて天井裏へ飛び込む。  
  71   153 ダレカが(猫の姿のまま)三階テラスへ降りると、給仕の格好をした若い男女(フレデリック・ウォーレスとジェニィ・マーゴット)に捕まる。迷い猫の張り紙と見比べられ、バートン卿の愛猫と勘違いされる。  
  72 155 シュノが歌声を披露している最中、大ホールからビーがでてくる。塞ぎ込んだ表情で、ドアマンに心配されるが追い払う。 秘書がクロークに駆け込み、警察に電話する。唇の動きからビーは通報の内容を読み取る。大ホールから出てきたロジャーに戻ろうと声をかけられるが、休憩しているからと断る。  
  73 156 シュノの歌声はテラスまで届いている。隙を見計らい、ダレカは女の腕から逃れる。 三階の南階段を駆け下り、ファサードと大ホールを繋ぐロビーへ。だが玄関の扉が閉ざされている。  
  74   157 猫が大ホールへ飛び込む。ホール右奥のスイングドアの下をくぐり、バックヤードの通路へ。レストラン内を駆け抜け、ロビーの側廊を走り、鐘楼の入り口へ。 地の文では“猫”とのみ書かれている。 ⇒No.103あたりで明らかになるが、この猫はダレカではなくバッドマだった。
  75   158 鐘楼の上層部で作業員たちが鐘の設置作業を急いでいる。腐食している梁が折れ、鐘は真っ逆さまに落下、地下室の石床に激突する。 鐘の下から、気を失っているダレカ(人間の姿に戻っている)がみつかる。  
  76 159 二階の北廊下で、厨房着姿のカラーをみつけたエリスが声をかける。レストランの仕事を休憩して、ここでシュノの歌を聞いてよいと言われたという。ダレカは執務室にいるはず。いったん物置部屋に寄ってカラーは学生服へ着替える。 鐘楼から鐘が落下した金属音がして、二人は駆けつける。鐘楼二階のドアの前で新聞記者(マイクル・ハボック)が道を開けろとスタッフに食って掛かっている。 老婦人(イヴリン)がカラーを呼び止め、シャーロットではないかと驚く。ウィッチフォードの駅の待合室でエリスが出会った老夫婦だった。老夫婦に背を向け、カラーは二階テラスに通じる通路へ駆け込む。 胸像の前を過ぎ去ったところでカラーが転倒し(鞄から落ちた)エリスの丸眼鏡を慌てて拾う。アンデルセンが角から顔を出す。顔を隠すためカラーはマフラーで口元を覆う。 物置部屋で着替えた後、カラーはエリスの学生鞄に靴や眼鏡をしまい、背中に背負う。 ⇒No.118あたりで明らかになる、エリスは猫に変身していたことの伏線。 老夫婦に声をかけられ、逃げたカラーが転倒し、鞄の蓋が開いてエリスが床に投げ出される。 ⇒これも、猫に変身して鞄に入っていたエリスが床に投げ出されたという意味。
  77 162 バイコーン警部が公会堂で警官たちの集めた目撃証言を整理する。 救護室で意識を取り戻したダレカに、バイコーン警部が魔女犯罪で手錠をかける。 警部が手錠をかけたダレカの手は血で汚れている。 ⇒No.100にて、これがオペラによる推理の根拠となる。
  78 163 火刑法廷の審問官に任命する辞令をオペラが受け取る。 ダレカは毒羊側の証人だったことに気づき、魔女たちが結託している可能性を疑う。証拠捏造を防ぐため急いででかける。  
  79   164 公会堂の塔の階段をオペラとバイコーン警部が上がり、執務室の前の廊下へ。 以下、バイコーン警部が調べたこと。 アルマジャック市議は廊下で刺され、執務室へ引きずられ、執務机の椅子に座らされた。背中からナイフで心臓を一突きにされ、指紋は検出されなかった。 執務机の上の手帳にはダレカと養子縁組の相談をしたと記されていた。 第一発見者が施錠された扉を蹴破ると、死体だけがあった。部屋の鍵は市議の持つ一本のみ、室内に落ちていた。ただし部屋の外から施錠して鍵を扉の舌の隙間から放り込むことは可能。 棚に赤黒い猫の足跡が残り、その真上の天井板に小動物なら通れる隙間が空いていた。窓は施錠されていた。執務室は手狭で、身を隠せそうな場所はほとんどない。  
  80   168 オペラとバイコーン警部がロビーへ戻る。 第一発見者でアルマジャック市議の秘書、リナ・ドレイトンの説明。 クロークで客の応対をしていた。午後六時頃、市議がダレカと塔へ入るのを見た。 七時に晩餐会が始まるも市議が戻らず、執務室へ内線電話をかけた。ダレカとの相談が長引いていること、くわえて、ロッカーの解錠番号を教えてほしいと市議に言われた。ロッカーは執務室用に購入したが、雰囲気に合わず執務室の外に置いていた。 シュノの歌が終わりかけた頃、再び内線電話をかけた。通話に出ず、足を運ぶと執務室の前の床に血痕があった。塔を下り、守衛に声をかけ、体当たりで扉を破ってもらった。  
  81   169 バイコーン警部の案内でオペラは、ダレカと目される猫の移動ルートをたどる。 大ホールの扉は分厚く、猫には開けられないのではとオペラが疑念を呈す。たまたまロビー側の扉を客(バッドマ)が、ホール側の扉を給仕が開けたとバイコーン警部が答える。 大ホールからバックヤードへ。緑色のペンキが飛び散り、緑色の猫の足跡が続く。 レストラン、ロビーの側廊、鐘楼へ。壁が崩れているのは、トッドハンター署長の息子(ロジャー)が駐車に失敗して車をぶつけたためだという。鐘は鐘楼の床を突き破り、支配人室へ落下した。 廊下の方から言い争う声が聞こえる。職人風の繋ぎを着た二人の男(ジョイとポール)が、鐘が落ちたのは鐘楼が古いせいだと主張する。公会堂の支配人が、納品が遅れて鐘の設置を急いだのはジョイ・アンド・ポール鋳物店の責任だと言い返す。 路地裏が狭すぎて、車から降りるときサイドミラーが壁に当たって折れたと言うポール。それはおまえの運転が下手だからだとジョイが裏切る。  
  82   171 オペラが一人で思案しながらロビーの二階の通路へ。 老夫婦(イヴリンとその夫)が首を傾げている。シャーロットをみかけたが、姿を消してしまったという。  
  83 173 留置場にぶち込まれたダレカに弁護士が接見に来る。毒羊ではなくバッドマだった。毒羊に頼まれたという。 自分が見聞きしたことをバッドマに説明する。猫に変身して執務室の天井裏を通った時、蜘蛛の巣がやたら顔にかかった。つまり犯人も魔女で猫に変身して逃げたわけではない。 事件について話し終えると、お前自身のことを話してくれとバッドマに頼まれる。  
  84 176 集合住宅の一室で無気力な日々を過ごすメリダ(エリスの母)。 玄関ポストに新聞が届く。アルマジャック市議殺害が報じられている。 玄関ポストに灰色の便箋が投げ入れられる。ハロルド・ヴェナブルズの遺稿を調べろ、カラーの真実がそこにあると記されている。  
  85 177 三月十日、ダレカの火刑法廷当日。 オペラが自宅を出て、ミチルの運転で火刑法廷へ。弁護人の毒羊の姿が見当たらない。また遅刻か。 ハロルド事件で毒羊はなぜ遅刻したのかとオペラは疑問を抱く。 ⇒恐らく毒羊=シュノであることが関係していると思われるが、明確な記述は見当たらない。
  86   179 正午きっかり、オペラが審理を始めると宣言する。毒羊が法廷へ駆け込んでくる。 オペラの冒頭陳述。魔女だと認めるか問われると、ダレカはすっとぼける。  
  87   180 バイコーン警部の証言。 通報を受けた警官が十九時十分に現場へ駆けつけた。遅れて警部が到着、証言をかき集め、ダレカを殺人容疑で逮捕した。 十八時頃、ダレカとアルマジャック市議が執務室へ向かうのをクローク前で目撃された。その後、被告人が塔から出てくる姿を見た者はいない。市議の手帳に書かれたメモを読み上げる。以上から、執務室にダレカがいたことは確実。 現場から鐘楼まで駆け抜けた黒猫の姿は大勢の客が目撃している。そしてダレカは鐘楼で姿を現した。このことから、黒猫に変身して逃亡を図ったと疑った。 オペラは、人間が執務室から鐘楼へ移動することは可能か問う。 不可能だと答える警部。十八時以降にダレカの姿を見た者がいない。  
  88   181 毒羊による反対尋問。一階には塔からロビーの側廊へ通じる扉がある。ダレカはクローク前を通らず、この扉を通っただけではないか。 警部がそれを否定すべく、アルマジャック市議の秘書に証言を求める。  
  89   182 秘書のリナ・ドレイトンが、遺体発見のくだりを証言する。 扉の前にはアレカヤシの鉢が置かれており、ダレカが通った可能性は無い。扉は塔の側に開くため、ダレカが鉢をどかしたなら、扉を閉めた後で元の位置に戻せない。  
  90   183 毒羊による反対尋問。仮にダレカが、死体を発見した秘書と守衛の目をかいくぐれたなら、塔を下りてからクロークの前を見咎められずに通ることはできたか。 オペラが口を挟む。そもそも秘書たちの目をかいくぐることなど可能か。 リナ秘書は否定する。途中で隠れてやり過ごせる物陰など無い。 執務室の前にあったロッカーはどうかと毒羊が問う。 まったく気にしていなかったと秘書が答える。 毒羊は次のように主張する。ダレカはロッカーに隠れて秘書たちをやり過ごした。シュノの歌声に魅了されてロビーの客たちはダレカに気づかなかった。鐘楼の壁には穴があるので、猫はそこから逃げ出した。  
  91   184 ダレカが殺人犯だと毒羊が認めたことに、ダレカが文句をつける。 ロッカーには二人も隠れられないため、他に真犯人がいたという主張はできない。犯人役を受け入れろと、毒羊がダレカの口を手で塞ぐ。  
  92   186 毒羊が新たな証拠として、棚の天板に緑色のペンキをぶちまけた写真を提示する。 フレデリック・ウォーレスとジェニィ・マーゴットの証言。 バートン卿の飼い猫だと思って黒猫を捕まえたが、逃げられた。大ホールのバックヤードでペンキ缶を倒した。写真には猫の足跡が写っている。 ダレカにペンキは付着していたかと毒羊に問われ、警部は否定する。変身解除後に汚れが残るかどうかはヴィクゴー・ルールに書かれていないとオペラが指摘。 毒羊が報告書を掲げる。シュノに実証実験をしてもらい、汚れが残ることを確認した。実験に立ち会った王立学会の主任物理学教授とシュノの署名もある。 バートン卿が飼い猫を捜しているという張り紙は悪質な悪戯だった。 ⇒No.110 魔女を火炙りにしようとする真犯人の仕込みだった。
  93   190 オペラが反論。ウォーレスが追いかけたのは別の猫だった。ダレカはウォーレスが去ってからテラスへ脱出した。 ジェニィがそれを否定する。ウォーレスが猫を追っている間、自分はテラスで休んでいたが、猫は見かけなかった。  
  94   191 ミチルがオペラに声をかける。王立学会や教授に電話がつながらない。報告書は偽物だとオペラが察する。 リナ秘書が発言を求める。ロッカーは施錠されていたので、隠れることはできない。毒羊に問われ、暗証番号をアルマジャック市議に電話で伝えたと答える。ダレカが声真似で市議を演じて、暗証番号を聞き出したのだろうと毒羊が主張。 オペラに命じられてダレカが市議の声真似をするが、全然違うと秘書に否定される。  
  95   194 陪審員の判断。『魔女』のパネルは十二枚中六枚だった。十分間の休憩に入る。  
  96 195 控室で毒羊、ダレカ、カラー、エリスが会話。 恐らく真犯人が声真似で錠前の番号を聞き出し、ロッカーに隠れたのだろうと毒羊が推理する。 バッドマは来ていないのかとエリスが問う。細工をお願いしたので法廷の外にいると毒羊が答える。 毒羊の推理に頷くも、何か忘れているようなとダレカが述べる。 ⇒No.104で明らかになる。執務室の扉は施錠されていたのではなく、鎖と南京錠で封鎖されていた。 バッドマにとって本法廷は危険だから出廷できないと毒羊が言い添える。 ⇒No.102 バッドマ=ビーだから。
  97 196 傍聴席のリナ秘書にオペラが声をかける。ロッカーの錠前の番号を誰にも教えていないのは確かか。 秘書が肯定し、メイスン父子商会の社用便箋をオペラに手渡す。今朝、郵便受けに入っていた。ロッカーが議論の俎上に載せられたら、錠前の番号を教えていないことを証言するよう記されていた。 ハロルド事件の火刑法廷を思い出す。あのとき何者かがオペラにメッセージを寄越したが、あの紙にもメイスン父子商会という社名が印刷されていた気がする。  
  98 197 審理再開。ダレカはロッカーに隠れたという主張を毒羊が取り下げる。 そもそもアルマジャック市議を殺害した真犯人がおり、そいつがロッカーに隠れたのだろう。ダレカは執務室には足を踏み入れなかった。 オペラが、市議の手帳にはダレカと二人きりと書かれていたことを指摘する。 部屋で二人きりとしか書かれていない、部屋=執務室ではなかったと毒羊は主張する。二人はロビーの側廊から路地へ出て、裏口から地下に入り、支配人室で会談した。 アレカヤシの鉢は問題にならない。市議が後で塔に戻ってきたとき扉の前へ戻したのだろう。そして執務室へ上がり、そこで真犯人に殺された。一方でダレカは会談後も支配人室にいて、そこへ鐘が落ちてきた。  
  99   199 オペラが反論する。路地は未舗装で、ぬかるんでいた。 警部に確認する。ダレカの靴は泥が付着していた。裏口から入館したためだろう。アルマジャック市議の靴には泥が付着していなかった。 毒羊が説明する。二つの裏口の上には庇があり、その下はアスファルトで舗装されている。つまり靴を汚さずに裏口間を渡ることができる。  
  100   200 オペラが再反論。ダレカの手には血液が付着していたことを警部に確認する。 ダレカは負傷したのだから血がついてもおかしくないと毒羊が言い返す。 オペラが、思いがけないことに気づく。執務室には市議の血により猫の赤い足跡があり、ダレカの手は血に汚れていた。つまり、変身しても身体の汚れは残る。毒羊が提示した報告書は本物ということになる。 それなら、なぜ報告書の真偽を確認することを妨害するのか。オペラにわざと真偽を疑わせて時間を浪費させ、刻限が迫ったところで報告書が本物だと立証する。そうなればオペラは反論を組み立てる時間もないまま敗北する。 すると、ダレカが魔女で執務室から脱出したことは(赤い血の足跡から)確かだが、公会堂を逃げ回ったのは(緑のペンキの足跡から)別の猫ということになる。  
  101   202 オペラがウォーレスに声をかける。ロビーから大ホールに通じる扉に猫が入ったとき、猫が視界から外れることはなかったか。 ウォーレスが頷く。大ホールに駆け込んだとき、警察署長のドラ息子のロジャーとぶつかった(そのとき猫が視界から外れた)。ロジャーはガールフレンド(バッドマ)と一緒だった。  
  102   203 オペラは次のように主張する。ダレカは猫の姿で大ホールへ入り、ロジャーのガールフレンドと暗闇に乗じて入れ替わった。ガールフレンドも魔女で、猫に変身して鐘楼までウォーレスに追われた。 ダレカのほうは人の姿に戻り、扉の狭間を通って階段裏の側廊へ、裏口を経由して地下の支配人室に入り、鐘が落下してきた。 警部に確認すると、恋人の名はバッドマ・スタンダールという。  
  103 204 ロジャーを新たな証人として召喚するまで休憩となる。 控室でエリスが毒羊に不安をぶつける。バッドマが魔女と疑われたのはまずいのでは。バッドマには身を隠すよう注進しているので大丈夫と毒羊がなだめる。 ダレカとバッドマが入れ替わったのは事実だとダレカが認める。秘書が警察に電話するのを聞いて、バッドマはダレカが事件に巻き込まれたと知った。何も悪いことをしていないバッドマまで火刑になることを憤るエリスに、陪審員は人間ではないのかもしれないと毒羊が考えを述べる。 地下へ降りたのは野暮用があったからだとダレカが言う。 ⇒No.109 アルマジャック市議の命のため、支配人室の電話で警察を呼んだ。
  104   208 控室での会話の続き。真犯人はロッカーに隠れたという説に、ダレカが異を唱える。「施錠」という言葉の意味にダレカとバッドマとで取り違いが起きていた。執務室で目を覚ましたとき、扉は(外から)施錠されていたわけではなかった。内側から鎖と南京錠で封鎖されていた。真犯人が執務室の外にあるロッカーに隠れたとしても、そのような封鎖はできない。 真犯人も魔女なのか。声真似でリナ秘書から解錠番号を聞き出したことからして、真犯人は魔女ではないと毒羊は考え込む。毒羊が執務室の写真をダレカに見せる。カーペットには市議を引きずった血痕が残っている。ダレカが目覚めたとき、これはあったか。首を横に振るダレカ。  
  105 210 ダレカ、エリス、カラーが法廷へ戻る。 エリスの隣、空席に子ぶりな箒が立て掛けてある。 ⇒No.120 真犯人の罠。カラーを魔女と示すため。
  106 211 身形の良い老紳士(ガストン元村長)と繋ぎを着た男(ジョイ工房長)が傍聴席へ。 ガストン元村長が、後ろの席に座る若い女に声をかけられる。晩餐会で会った覚えがある。知り合いの女の子を捜しているという会話をした。女が、アンデルセン・スタニスワフと名乗る。  
  107 212 ロジャーの証言。ビーは一緒ではないのかとオペラに問われ、家に電話したが出かけていると言われた旨を答える。 晩餐会にはビーと一緒に参加した。大ホールへ入ろうとして、黒猫が飛び込んできた。先に行ってて、という声がしたきりビーとはぐれた。ビーとダレカは同じ学校に通っているので知り合いではあるが、ビーが魔女とは飛躍がすぎる。 毒羊が、自らを犠牲に友を救おうとするほどビーとダレカは固い絆で結ばれているのかと問う。ロジャーが笑い飛ばす。ビーはめっぽう我が強い女。  
  108   215 ビーには逃げおおせる確信があったからこそ身代わりになったのではないかと考えるオペラ。 ロジャーの運転する車にビーも同乗していた。運転を誤り、鐘楼の壁に車をぶつけ、穴を開けてしまった。同乗していたビーはそれを知っており、穴から逃げればいいと考えたのではないか。 その後、ビーとは再会できたかとオペラがロジャーに問う。鐘が落ちてロビーが大騒ぎになったとき、ビーは外から入ってきたとロジャーが証言する。  
  109   216 入れ替わりの後、なぜダレカは支配人室へ行く必要があったのかと毒羊が突っ込む。 オペラが答えに詰まっていると、バイコーン警部が声をあげる。公会堂で殺しが発生したと通報したのは匿名の人物だった。現場へ赴くと秘書が通報したと言った。今にして思えば、通報者は秘書と匿名の人物の二人だったことになる。支配人室には電話がある。通報したのはダレカではないか。 叔母を殺しておいて自ら通報したのか、と毒羊が疑問を提示する。叔母に息があるなら、すぐ警察を呼べば助かるかもと考えたのだろうとオペラが反論。ダレカが低い呻き声を上げる。図星らしい。  
  110   218 陪審員の判断。『魔女』のパネルが三枚復活する。 毒羊がオペラに内緒話を持ちかける。ここで手打ちにしないか。 執務室の扉は内側から鎖で封鎖されていた。すると真犯人は市議の遺体に変装したと考えるしかない。ダレカが目覚めたときカーペットに遺体を引きずった血痕がなかったのも、それを指している。本物の遺体はダレカが逃げた後で真犯人が執務室へ戻した。つまり、真犯人はダレカに魔法を使うしかない状況を作ろうとした。迷い猫の張り紙も真犯人の仕込みのひとつだった。すなわち、犯人はダレカを火刑法廷に送り込む(魔女を火炙りにして殺す)ために状況を設計している。 だが、オペラは毒羊の提案を断る。  
  111   222 ジョイ・アンド・ポール鋳物店の工房長、ジョイの証言。 公会堂の裏手、路地の奥にトラックを十八時頃に停めた。壁にぴったり沿って駐車したので、サイドミラーが壁に当たって折れ、助手席のドアが開かないほどだった。  
  112   224 ウィッチフォード村の元村長、ガストン・ブレークの証言。 シャーロット・リードらしき少女が通路の奥に消えた経緯を語る。通路の奥からアンデルセンが来たが、そんな少女は見なかったという。  
  113   224 アンデルセンの証言。事件当夜は公会堂で臨時雇いの仕事をしていた。 鐘の落下音に驚いてロビーに向かう途中、二階南通路の胸像の前でエリス・カーソンにばったり会った。通路の出口でブレーク夫妻に呼び止められた。後は元村長の証言と同じ。 エリスと共に二階テラスを通ったとき、トラックは見なかったかオペラが訊く。わからないと答えるアンデルセン。ただしそのとき、テラスの外から男たちの言い合う声なら聞こえた。ジョイが、自分たちの声だと認める。 シャーロットは二階テラスからトラックの上に飛び移った(結果的に消えたように見えた)とオペラが唱える。だとすれば、トラックは二つの裏口を塞ぐ位置に停まっていたことになる。裏口から出入りできなかったなら、市議が地下から塔へ移動したという毒羊の主張は成立しない。  
  114   228 毒羊が反論する。市議は他のルートを通ったのではないか。警部が否定する。他のルートとして厨房の横の階段があるが、そこはスタッフが行き交うため、市議の姿を目撃した者がいないのはおかしい。 毒羊が再び反論。市議は瘦せ型なので、少しでも扉が開けば出入りできる。扉は分厚く、上部の出っ張りが車にぶつかるので、猫一匹通れないとオペラが否定する。  
  115   229 ミチルがオペラに指摘する。それではオペラの説も成立しない。 裏口がトラックで塞がれていたなら、バッドマと入れ替わったダレカが地下へ移動できない。猫一匹通れないなら、猫に変身しても通れない。混乱するオペラ。  
  116   231 メリダ・カーソンが話を聞いてほしいと訴え、手提げ鞄からハロルドの取材記録を取り出す。 その女の口を塞げと声を荒げる毒羊。証人を拒絶する権利など無いとオペラは退ける。 取材記録によればカラーこそ〈ウィッチフォードの魔女〉であり、死んだとされていたリード家の娘、シャーロット・リードだった。  
  117   233 傍聴席で不安に震えるエリス。 エリスは何も心配しなくていいと、カラーがエリスの手を握る。  
  118 234 晩餐会の夜の回想。イヴリンに、シャーロットかと声をかけられカラーは通路の奥へ駆け込む。カラーが転び、背中の鞄の口が開き、猫に変身していたエリスが床に放り出される。  
  119   235 その少し前、物置部屋でエリスは猫に変身することに成功したが、人の姿に戻れなくなった。ダレカに戻り方を教わるべく、カラーの鞄に隠れてダレカを捜していた。 通路の奥からアンデルセンが現れ、声をかけられる。アンデルセンはカラーのことをエリスと勘違いしていた。猫のエリスがあげた声を、カラーが発したものと思い込んだ。くわえてカラーは鞄から落ちたエリスの眼鏡をかけて変装していた。  
  120 236 ブレーク元村長が、カラーのことをシャーロットだと認める。 エリスの耳元でカラーが囁く。きっとこの世界では、理にかなわないことは起きないんだ。メリダはエリスを憎んでいない、ハロルドが死んだのはぼくのせいだから。 メリダが、カラーは魔女、二階テラスから箒に乗って姿を消したと訴える。事件と無関係な人物を刑に処すことにオペラは抵抗を覚える。二階テラスに梯子が立て掛けられており、それを使ったのかもと唱える。その場合はジョイたちが目撃したはずだとメリダが灰色の便箋を見ながら反論する。灰色の便箋を授けたのは誰かと毒羊が問う。メリダは答えない。 梯子は市議が立て掛けたのかもしれないと毒羊が指摘する。ダレカと支配人室で会談した後、執務室へ戻るべく路地を出て、トラックで裏口が塞がれていると気づいた。それで倉庫から梯子を持ってきて、テラスに上がった。メリダが言い淀んでいると、灰色の紙飛行機が飛んでくる。紙飛行機には毒羊への反論が記されていた。市議の靴に泥は付着していなかった。梯子を運んだなら泥が付着したはず。 メリダが続きを読む。カラーが箒で飛行したのでなければ、一人の少女(エリス)が変身魔法を使用したことを証明する。カラーが箒で空を飛び、自分は魔女だと認める。 恐らく“一人の少女(エリス)が変身魔法を使用したことを証明する”とは客観的真実のことを指すと思われる。つまり、アンデルセンがエリスと勘違いした相手は、本当はカラーだった。エリスは猫に変身していたため、結果的にカラー=シャーロットが消えたように見えた。
  121   242 エリスが悲鳴を挙げる。 陪審員の判断。十二枚すべて『アクトン・ベル・カラーは魔女』の文字。 カラーが火刑に処される。カラーの身体にエリスがしがみつき、炎が燃え移る。  
  122   245 炎が消え去る。通路に横たわるエリスは熱傷を負っている。  
  123   246 オペラが法院の一室で、ヘンリー局長と会話する。何の罪もないカラーが国家によって殺されたのはおかしいとオペラが訴える。 火刑法廷の存在理由についてヘンリー局長が説明する。火刑法廷は魔女をマントル(地底、地獄、魔界)へ回収するためのものであり、陪審席には誰もいない。〈湖の魔女〉事件では四階から飛び降りた被告がたまたま無事だったと主張したが火刑に処された。陪審員の判断は機械的だが市民による判断と一致する。  
  124   252 オペラがソドベリー・クロス駅から、すぐ隣のベルガード療養院へ。 来院者記帳にサインしようとしてダレカの名前をみつける。ちょうどダレカが階段を下りてくる。声をかけるもダレカは療養院を出て行く。 エリスの病室を訪れる。眠り続けているエリスにオペラが謝罪する。ドアがノックされ、アンデルセンが入ってくる。アンデルセンもエリスを助け出すとき右腕に火傷を負っていた。応接室に来るよう、チェズニー医師が言っていたと伝えられる。 チェズニー医師と応接室で会話。オペラがエリスの後見人となることが正式に認可されたと伝える。医師によれば、エリスが回復する見込みは薄い。  
  125   256 病室に戻る。アンデルセンがなにかエリスに話しかけているが、列車の音でかき消される。エリスが寂しい思いをしているかと話し掛けていたという。 エリスの後見人になることをアンデルセンに伝える。火刑審問官を罷免されたため、事務弁護士としてやっていく。事務所を開くなら、あそこなんてどうだとアンデルセンが指さす。病院の向かいに建つビルの二階に借り手募集の紙が貼られている。 地の文で「不意に可笑しくなって、笑い声が零れる。」という文章が太字で示される。この病室でオペラは自然と笑いがこみ上げることがある。 ⇒No.189 エリスによる感応の魔法の影響。これ以降、太字は感応の魔法が使われたことが意味する様子。
  126   258 オペラが市警察署を訪ねる。バイコーン警部に第四面会室へ案内される。メイスン父子商会の便箋を差し出す。メリダと同じものだと警部が認める。 バイコーン警部の話。数日前にアムステルダム当局がダレカの父親(スティーブン)の身柄を拘束した。しかし、アルマジャック市議の命を狙うような規模の犯罪組織ではない。つまり、市議を殺したのは魔女を陥れようとした者。バイコーン警部は、その人物を仮にメイスンと呼ぶことを提案する。 メイスンがどのように動いたのか、事件や裁判を振り返る。メイスン父子商会は実在する老舗の製薬会社で、便箋は入手困難ではない。  
  127   259 バイコーン警部の話の続き。三月三日、シュノの命を狙う列車爆破事件が起きた。警備員に扮して爆発物を仕掛けた、反魔女組織〈ラ・スプレマ〉の構成員であるロラン・ブルームを聴取した。この組織の構成員は全員、ダレカ裁判当日のアリバイを確認できた。つまり、メイスンは他にいる。  
  128   261 三月末日、ガストール法律事務所が開業する。 オペラが火刑法廷審理録を読んでいるのを目にしてミチルが眉を顰める。〈巨石の魔女〉裁判は冤罪の可能性が取り沙汰された。 ミチルが、火刑審問官解任の通達を渡す。くわえて《デイリー・バナー》紙の昨日の夕刊を差し出す。 バッドマが魔女というオペラの主張は間違いだする記事が掲載された。記者のハボックが、鐘が落ちた直後に鐘楼から二階北廊下へ飛び出す黒猫を見たという。給仕の女が仲間の魔女だったのではないか。 給仕の女とは、猫が大ホールへ飛び込んだとき大ホール側の扉を開けた人物。ロビー側の扉を開けたバッドマが入れ替われたなら、給仕も同様に入れ替わるチャンスがあったという理屈。オペラは、審理の際のダレカの反応を見る限りは入れ替わった相手はバッドマだと思う。
  129   264 オペラとミチルとの会話の続き。ミチルが身の上を打ち明ける。本名はミチル・モーリスリンク。初めて殺人を犯した魔女〈客船の魔女〉はミチルの姉にあたる。オペラの付き人になったのは、魔女を憎んでいるから。 ミチルに対し地の文で「放っておいたら、この子はどこか遠くへ行ってしまう。」という心理描写が太字になっている。 ⇒No.189 エリスによる感応の魔法の影響。
  130 266 三月、カレッジの中庭でバッドマ(ビー)がロジャーに声をかけるも素っ気なくされる。感応の魔法を用いるも効果が現われない。ダレカ裁判でバッドマも魔女とみなされている。事実、バッドマは感応の魔法でロジャーを誑かしてきた。  
  131   268 バッドマの生い立ち。商売人である父親の影響で合理主義者になった。 ベルガード療養院の、エリスの病室にいるバッドマ。アンデルセンがやってきて、近々この街を出るつもりだと打ち明ける。そのための路銀が必要なので、取引をしたい。 四月の中頃、シュノがベルガード療養院でクロスパトリック夫人と対談する。そのとき、夫人のポーチから金品を盗みたい。見返りとして、魔女だという疑いを代わりに引き受けてやる。  
  132   272 下町の新聞屋でバッドマが《デイリー・バナー》紙の夕刊を買う。(オペラが読んだ)大ホールの扉を開けた給仕が魔女だと主張する記事がある。 アンデルセンは新聞社の弱みを握っているらしく、記事を掲載させることができた。黒猫が北廊下へ逃げたというのはでっちあげ。次に、この給仕はアンデルセンだという噂を街に流す(そうすることでバッドマではなくアンデルセンが魔女だと疑われるようにしてやる)。実際に扉を開けた給仕は、事件後すぐ故郷へ帰ったので工作が露見することはない。  
  133   273 バッドマがベルガード療養院へ。シュノとクロスパトリック夫人が対談する応接室の天井から隣の空き家へ真新しいダクトが渡されている。 アンデルセンに言い渡された計画を思いだす。黒猫に変身して応接室へ忍び込む。ダクトを通り、空き家の二階で待機するアンデルセンにポーチを渡す。アンデルセンは療養院にいる連中に姿を晒し、自分は魔女だったと思わせて、この街から姿を消す。 外階段を上がり、バッドマは空き家の二階にある書斎へ。天井裏のダクトに首を突っ込む。計画の実行日は一週間後。  
  134   276 ダレカ裁判からちょうどひと月、四月十日の昼。 猫に姿を変えたバッドマが空き家の書斎へ。アンデルセンが姿を現す。 バッドマがダクトに潜り、療養院の応接室へ。記者(ハボック)に案内されてクロスパトリック夫人が入室する。ポケットからロザリオを取り出し、魔女の前ではしまったほうが良いと、ポーチを開ける。ポーチの中身を見て、夫人が動揺している様子。ポーチの中身が見えた記者が顔色を変える。 シュノとそのボディガード、チェズニー医師が現れる。壁時計が止まっていると指摘するシュノ。廊下の窓の外、大時計があるのでそれを見ればいいと記者。 エリスをシュノたちが見舞うことはできるか記者が尋ねるが、チェズニー医師が断る。  
  135   280 対談が始まるも、クロスパトリック夫人は大時計をちらちら見ている。突然、席を外す。 廊下から金切り声。シュノが廊下へ、ボディガードも続こうとするが、ハボック記者にぶつかり転ぶ。カメラの試し撮りをした記者も廊下へ。チェズニー医師がおろおろしているとボディガードの男が戻ってくる。夫人が何者かに襲われたという。医師も出ていく。 応接室が無人になり、バッドマは絨毯の上に降り立つ。廊下に顔を出すと、曲がり角から夫人の呻き声などが聞こえてくる。顔を隠した小柄な強盗に殴りかかられたという。医師と記者が夫人を支え、応接室へ戻ってくる。ややあってシュノとボディガードも戻る。受付の女性によれば療養院から出て行った者はいないとボディーガードが言う。 窃盗犯を捕まえるべく記者、ボディガード、シュノが二階の病室を確認していく。応接室の隣の病室は使われておらず、施錠されている。扉の上部に開口部(トランザム)があるが人は通れない。その隣はエリスの病室。シュノが、窓の錠前が壊されていることを指摘する。 廊下でシュノたちの様子を伺っていたバッドマが応接室へ戻る。ポーチを口にくわえ、換気口の中へ。戻ってきたシュノたちが声をあげる。ダクトの穴からポーチを落とし、アンデルセンがポーチを拾う。ダクトを進んだバッドマは、出口が金属の壁で塞がれていると気づく。 No.186で明らかになるが、ダクトの穴からポーチを落とした先は実際には空き家の書斎ではなかった。
  136 284 イヴ・アトウッドが療養院での兄の見舞いの帰り、空き家の外階段で本を読む。見知らぬ大型トラックが停車し、排煙で咳き込む。トラックから白髪の中年男と若い男が降り、空き家の階段を上がっていく。イヴは迎えに来た姪の車に乗る。  
  137 285 バイコーン警部が市警本部を飛び出し、空き家の二階にある書斎へ。 喉が裂けたミチルが横たわり、血だまりには銀色の拳銃が転がっている。 アンデルセンが意識を取り戻す。死体発見時、この女性は本棚の陰に倒れていたと警官が説明する。  
  138 287 事務所で居眠りしていて、電話のベルに目を覚ますオペラ。電話をかけてきたのはバイコーン警部、二週間ぶりだった。ミチルが殺害されたことを知らされる。  
  139   288 火刑法廷事務局長ヘンリーの部屋を一か月ぶりにオペラが訪れる。ミチルの事件の火刑法廷のため審問官に復任したいと頼むも断られる。〈巨石の魔女〉裁判、〈ドーバーの魔女〉裁判について冤罪を立証すると脅す。  
  140   290 オペラが事件現場へ。審問官に任じられたことをバイコーン警部へ伝える。 なぜアンデルセンは魔女とみなされたのか。バイコーン警部が療養院で起きたことを説明する。クロスパトリック夫人を襲った強盗未遂犯は不明、覆面をしていたが恐らく女性だという。覆面や衣服、凶器の棍棒がモンマス川の川下で発見された。銃で撃った跡のあるクッションもその近くで見つかった。猫がポーチを持ち去り、ダクトを通って、この部屋へ逃げ込んだらしい。 午後三時半に古書業者が空き家を訪れ、遺体を発見した。ミチルは恐らく、ポーチを盗んだアンデルセンが変身を解く瞬間を目撃したのだろう。アンデルセンが銃を撃ち、二発のうち一発はミチルの肩に当たり体内にとどまり、もう一発は首を貫いて本棚に弾痕を残した。  
  141   293 凶器の拳銃についてバイコーン警部の説明の続き。 ミチルの肩および本棚の銃弾は、血だまりに落ちていたほうではなく、クロスパトリック夫人の金色の銃から撃たれたもの。夫人は三日前に銃を盗まれた。それがなぜか対談当日、ポーチに入っていた。同席した記者もそれに気付いた。 夫人の銃は貨物列車の荷台に落ちていた。リヴィングストン駅の駅員が発見して大騒ぎになった。犯人は書斎の窓からモンマス川へ投げ捨てようとしたが、川沿いの線路を通過しようとした貨物列車に落ちたのだろう。貨物列車が駅に到着したのは午後三時半、空き家の横を通過するのは三時頃。  
  142   294 オペラが書斎の南側の扉を開ける。バイコーン警部によれば、長い間開けられていないという。一階へ階段を下りる。裏口から外に出て、家の正面へ。 バイコーン警部の見解。アンデルセンはポーチを盗み、そこに入っていたクロスパトリック夫人の銃でミチルを襲った。ミチルは自前の拳銃で応戦した。血だまりに落ちていたのはミチルが所有する銃。 アンデルセンに銃創はない。ミチルともみ合いになり、頭を壁に強打した。そのとき放った二発目の弾丸でミチルの喉を引き裂いた。拳銃を窓から投げ捨てた後、頭の打撲のせいでアンデルセンは倒れた。  
  143   296 《デイリー・バナー》社支局の記者室でハボック記者にオペラが話を聞く。事件当日に撮影したハボックの写真を確認するが、ポーチの中に拳銃が入っていたかどうかは判断できない。ハボックは腕時計をしていない。窓の外の大時計しか時刻を確認できるものがない。 二時五十九分、応接室で試し撮りした写真(夫人が襲われた時刻)。三時九分、ポーチをくわえて跳躍する猫の写真。貨物列車が空き家の前を通過するのは、鉄道会社によれば三時五分頃。 時刻が合わない。アンデルセンは三時九分にポーチを盗み、ミチルを殺害して窓から銃を投げ捨てたはず。その頃には貨物列車はすでに通過している。  
  144   297 オペラが療養院を訪れる。受付係のモルドナ・カーティスに話を聞く。 モルドナは二時五十五分に療養院へ戻ってきた。夫人が襲撃されたのは二時五十九分だから、暴行犯を目にしていないのはおかしいとオペラが指摘する。大時計は五分ほど進んでいたんではないかと疑うオペラ。  
  145   299 療養院と空き家の間の路地にオペラが足を踏み入れる。修理工のアレック・ボイルに話を聞く。 大時計が倒れている。ボイルによれば、撤去すべく事件の二日前に路地へ運ばれ、いつの間にか倒壊していたという。 駅員に聞き込みをするも、時計が狂っていたか証言は無し。二十年ほど前の駅の改修工事で大時計の周りは壁に囲まれ、貨物室の窓からしか文字盤が見えない状態になっていた。 運び出すときボイルは時刻に違和感を感じなかった。ずれていたとしても、せいぜいプラスマイナス五分だろう。  
  146 300 面会室にいるアンデルセンの前に毒羊とバッドマが現れる。バッドマに頼まれ毒羊は弁護人として名乗りを上げたものの、理不尽な目に遭う魔女を救うことが信条のため、魔女ではないアンデルセンを弁護するか決めかねているという。 何者なのか問われ、アンデルセンは肩書がダメだと告白する。何者でもない人間でいることに執着している。 なにがあったのアンデルセンが説明を始める。バッドマをダクトに送り出し、書斎で待つうちにうとうとした。目を覚ますとバッドマが戻ってきたところでポーチを受け取った。ポーチの中身を物色したが、拳銃など入っていなかった。そこへ女が入ってきて、こちらに拳銃を向けた。もみ合ううちに頭を壁にぶつけて意識を失った。 バッドマが口を挟む。実はポーチを渡した後もダクトの中にいた。車道に停車した古書業者のトラックにダクトの出口を塞がれてしまったため。二、三十分ほどして古書業者が遺体をみつけた声がした。つまりダクトを通ったのはバッドマのみ、他の魔女が猫に変身して出入りはしていない。 毒羊が拳銃の色を問う。暗くてアンデルセンにはわからなかった。 アンデルセンの腕から硝煙反応が検出された。アンデルセンには覚えがない。  
  147 306 無意識空間に閉じ込められているエリス。意識が覚醒へ近づくと痛覚が戻り、全身が悲鳴を上げる。 近くで誰かがエリスの名を呼ぶのが聞こえる。  
  148 306 事件から一週間目の朝。火刑法廷の前に報道陣が集まっている。有象無象をあしらいながらオペラが火刑法廷の門をくぐる。  
  149   307 法廷に入ったオペラにバイコーン警部が声をかける。弁護人は来ないという。毒羊の鞄が法廷の入り口にあり、アンデルセンに調査資料を渡す、自分は行けたら行くというメモが添えてあった。開廷時刻となる。  
  150   310 バイコーン警部が、アンデルセンを魔女と考えた理由や遺体発見の経緯を説明する。 アンデルセンが異議を唱える。ある魔女と共謀した。魔女がポーチを盗み、それをアンデルセンが受け取ったところへ突然現れた女に襲われた。その魔女にはもう、この街から離れてもらった。  
  151   312 イヴ・アトウッドの証言。療養院で兄を見舞い、二時半にそこを出て姪が車で迎えに来るのを空き家の外の階段で待っていた。まずミチルが、しばらくして古書業者の男たちが階段を上がった。 オペラがバイコーン警部に確認する。書斎の南にある扉は開閉された様子がない。窓は鉄柵で塞がれている。アンデルセン以外に現場を脱出できた者はいないと説明するオペラ。 殺人犯は魔女かもしれないとアンデルセンが主張する。真っ昼間なので箒で飛んで逃げるのはさすがにない。猫が通らなかったかアトウッドに確認するが否定される。バイコーン警部が、外階段は金網で覆われているので猫が通れる隙間はないと補足する。恐らくはダクトの出口から路地裏へ逃れたのだろう。どうやって真犯人は消えたのか、悩むアンデルセン。  
  152   315 《デイリー・バナー》紙の首席記者、マイクル・ハボックの証言。襲撃事件について証言する。 続いてクロスパトリック夫人の証言。ポーチには盗まれた拳銃があり、メモ用紙が添えられていた。拳銃所持を公にされたくなければ、二時五十八分に療養院の一階に一人で来るように。メモに従おうと廊下に出たところを襲われた。 猫に変身できる者しか凶器を入手できなかった以上、アンデルセンは魔女だとオペラが主張する。 毒羊の残した書類を頼りに、アンデルセンが反対尋問をする。ハボック記者の写真から犯行時刻は三時九分より後だが、その頃には貨物列車は通り過ぎている。  
  153   318 大時計は五分ほど進んでいたのだろうとオペラが主張する。 ソドベリー・クロス駅の駅員、ジャイル・バイソンの証言。大時計は人目に触れない中庭にあり、時刻が正確だったか覚えている駅員はいない。 修理工、アレック・ボイルの証言。五分程度ずれることはありえる。文字盤の裏を開けた痕跡がなく、アレックが引き取った後で誰かが時刻をずらした可能性はない。 療養院の受付係、モルドナ・カーティスの証言。暴行犯の姿を目にしていないことから、大時計がずれていた可能性がある。 暴行犯は窓から出たのではとアンデルセンが指摘する。そんなことをすれば多くの人に目撃される恐れがあるとオペラが反論する。  
  154   320 陪審員の判断が下る。十二枚中六枚が『魔女』を示す。 ミチルは自殺だったのではないかとアンデルセンが主張する。誰も書斎から出ていないなら、襲ってきた女=ミチルと考えるしかない。ミチルは魔女を憎んでおり、捨て身の魔女狩りとしてこんなことをしたのでは。 バイコーン警部が否定する。ミチルが自らの喉を撃ち抜いたなら、その後で拳銃を貨物列車に投げ入れることはできない。  
  155   323 バイコーン警部がボイルに、大時計が一か月で五分ほどずれる可能性はあるか訊く。一か月では数秒もずれないとボイルが答える。 三月三日、シュノが乗る列車が爆破された。ソドベリー・クロス駅の貨物室でバイコーン警部はロラン・ブルームを取り調べた。駅の外装をメンテナンスする足場が腐食しており、通路が崩落した。そのとき貨物室から警部が目にした大時計は午後九時ちょうどを指していた(五分ほど進んでいたはずだから、実際には八時五十五分頃)。 バイソン駅員がそれを否定する。メンテナンス用の通路に女性の客たちがいた。午後九時を告げる鐘が鳴り、客の一人(ダレカ)がもう九時だ、早く帰らせろと言った。この客たちがいたのが崩落したメンテナンス用の通路であり、九時の時点では崩落していなかったことになる。  
  156   327 自分で持ち出した証拠に追い詰められて焦るオペラ。列車爆破事件の捜査資料が目に留まる。 バイソンに確認する。通路にいた客たちとはダレカ、バッドマ、エリス、カラーの四人だった。バイソンが目撃した四人は箒で空を飛んでいた(すでに通路は崩壊していたが、空中に浮かぶことで通路が存在するようにみせかけた)とオペラが主張する。窓は大きくないため足下は見えなかったとバイソンが証言する。  
  157   329 陪審員の判断が下る。『魔女』が一枚増える。 バッドマが傍聴席から飛び出し、私が窓の外に浮いていたわけがないと否定する。  
  158 330 バッドマの回想。ベルガード療養院のエリスの病室へ窓から侵入する。窓の錠前は見舞いに来やすいようバッドマが壊しておいた。 ダレカがやってくる。エリスの容体に変化があったと聞いた。アンデルセンの裁判に乗り込むべきか迷うバッドマ。カラーの裁判のとき、オペラに感応の魔法をかけていたと告白する。焦燥感を煽って物事を考えられないようにした。ダレカの裁判でカラーを救えなかったことを後悔し、バッドマは決意を固める。 「いや……本当にそうだろうか?」という地の文が太字。 ⇒No.189 エリスによる感応の魔法の影響。 ベッドの下になにかあると気づいたダレカが覗き込もうとするが、下手に触るなとバッドマに止められる。 ⇒No.184 アンデルセンが爆弾を隠していた。
  159 333 バッドマの証言。爆破事件の日はロジャーたちと一緒に遠くの街のお祭りに行った。帰りの列車で爆発が起きた。ソドベリー・クロス駅で、ダレカが通路に行くものだから引き留めるためついていった。 四人を魔女として火刑にしたいのかとオペラに詰め寄る。バッドマ、ダレカ、エリスについて陪審員の魔女判定が九枚追加されている。バッドマの呼びかけでダレカもでてくる。バッドマの挑発に恐怖を覚えるオペラ。 「ぞわりとオペラの背筋が震えた~」が太字。 ⇒バッドマによる感応の魔法の影響。
  160   336 最初から考え直そうとバイコーン警部が提案する。大時計が正確だったなら、貨物列車に拳銃を投げ込めない。駅に先回りする方法はあるのか。オペラの問いをバイソンが否定する。線路はまっすぐで近道はなく、貨物列車に追いつける他の列車もない。ただし、貨物列車はそれほど厳密に時間を守っていない。空き家の前を三時十分に通過し、それから三時半に駅へ到着した可能性はある。 陪審員のパネルからバッドマ、ダレカの文字が消え去る。  
  161   338 オペラが休憩を宣言しようとしたところへ毒羊が現れる。毒羊は傍聴席の後ろから現れた。別人に扮装して初めから法廷にいただろうとオペラが指摘するも、素知らぬ顔の毒羊。  
  162 339 控室で、バッドマが名乗り出た理由を説明する。オペラの推理が的外れなので大丈夫だと思った。大時計は、本当は五分遅れていた。駅員と会話したとき足場はまだ崩落していなかった。九時五分に落ちた。 毒羊が、ミチルは自殺したというのが真相だと言い出す。ミチルはクロスパトリック夫人の邸宅から金の拳銃を盗んだ。空き家の書斎で本棚に一発撃っておいた。再び夫人の家に忍び込み、メモを添えて拳銃をポーチに返した。 事件当日、ミチルが夫人を襲った。つまり暴行犯=ミチルだった。このとき拳銃をポーチから抜き取った。ミチルは窓から外に出て、路地裏で自らの肩に発砲する。そして拳銃を貨物列車に投げ入れた。川下で発見された、弾痕のあるクッションはこのとき使ったもの。銃声を抑え、かつ盲管銃創とするため。 大時計は遅れていたので、夫人を襲ったのは三時四分の出来事。列車は三時五分から十分の間に通過するので間に合う。アトウッド老嬢の隣を通って空き家の書斎に入った。ポーチを受け取ったアンデルセンに襲い掛かって昏倒させ、銀の拳銃を握らせて発砲、硝煙反応を偽装した。続けてミチルは銀の拳銃で自ら喉を撃ち抜き、自決を遂げた。 No.184で明かされるとおり、毒羊が語った真相はあくまでも推理。
  163   342 ミチルはなぜそんなことをしたのかとアンデルセンが問う。この状況を作り上げるためと毒羊が答える。メイスン父子商会のメッセージもミチルが送り主だったのではないかと考える。 火刑法廷の陪審員は蓋然性を判断基準に含める。あまりに非合理なミチルの行動は真実と認められない恐れがある。別の真相を捏造しなければならないと毒羊が語る。  
  164 343 オペラが法廷に戻る。控室で、メイスン父子商会の便箋を受け取っていた。 便箋の入っていた封筒の消印は事件の前日のものだった。何故それほど前に助言を記すことができたのかオペラは訝しむ。 ⇒No. 176で便箋の内容(エリスを証人として呼ぶこと)が明らかになる。
  165   345 毒羊が、ミチルを殺害した真犯人の名を挙げると言い出す。シュノによる自供文を渡され、オペラがそれを読み上げる。先日新聞各紙に掲載されたシュノの直筆文と筆跡が似ている。 クロスパトリック夫人が廊下で襲われたとき、シュノはポーチから拳銃を抜き取った。洗面所の窓から空き家に向けて銃を撃ち、それがミチルの肩、そして喉にあたった。 ハボック記者が、シュノは真っ先に飛び出したため銃を撃つ時間があったと言う。ポーチから拳銃が抜き取られたら気づくだろうとオペラが問うが、夫人から期待した答えは返らない。  
  166   348 オペラが反論する。シュノはどうやって拳銃を捨てたのか。夫人が襲われたのは二時五十九分だから貨物列車に投げ捨てることはできない。 毒羊が答える。大時計は五分ほど遅れていた。だから列車への投棄は可能。オペラ自身が、大時計はプラスマイナス五分のずれがありうると述べていたのだから、五分遅れていたという毒羊の主張も受け入れられるべき。 ポーチに入っていたのは小型拳銃であり、有効射程が短いとオペラが指摘。毒羊が、だからこそ一発目は急所ではない肩にあたり、通常は狙わない喉にあたったと答える。  
  167   349 シュノの自供文の続きを読む。動機はなんだったのか。 独自調査をした結果、ミチルこそがメイスンだという事実を摑んだ。ミチルが空き家でアンデルセンに襲い掛かっているのを目にし、魔女を脅かすミチルの蛮行を見逃すことはできないと思った。  
  168   349 毒羊が手袋をした手で、金の拳銃を眺めている。バイコーン警部に、弾倉の内側の指紋を調べてほしいと頼む。 シュノは、自分以外の者に容疑を向けられた場合に備えて証拠を残したという。シュノの人差し指の指紋が弾倉にあるとバイコーン警部が声を上げる。 事件前に拳銃が盗まれたとき、なんらかの事情で触れたのではとオペラが反論する。拳銃が盗まれたのは事件の三日前、シュノはニューヨークにいたため無理だと毒羊が答える。 陪審員の判断が下る。『魔女』は一枚減り、十二枚中六枚に。  
  169   352 どうやってシュノの指紋を偽装したのか悩むオペラ。 毒羊こそがシュノではないか、バイコーン警部へ手渡したとき触れたのではと気付く。  
  170 353 オペラが毒羊の正に気付いたことを、毒羊が悟る。その推理は正しい。  
  171   353 シュノが過去を振り返る。〈巨石の魔女〉裁判は冤罪だったのではと人々は批判した。そこから逆に、魔女は人間とみなされていないことを悟った。たとえ魔女が本当に罪を犯していようとも、不寛容な世界から魔女たちを守る義務があるとシュノは考えた。  
  172   355 狼狽するオペラ。シュノを脅し、人差し指を切断して指紋を偽造したのだろうと言葉を無理矢理捻り出す。本気で言っているのかとバイコーン警部が顔を顰める。 オペラの心中を察する毒羊。毒羊を押さえつけて化粧を落とせばシュノだと示すことは容易だが、その場合はシュノが確実に火炙りになる。カラーのトラウマを抱えるオペラにそれはできない。  
  173   356 オペラが意を決して言う。大時計の時刻さえ特定できれば、どちらが正しいか決する。 暴行犯の逃亡方法について議論を進める。最初は大時計が五分進んでおり、暴行犯は二時五十四分に夫人を襲撃後、すぐに玄関から逃げたと考えた。それはバッドマやバイソンの証言で否定された。 玄関以外の出口としてどこがあるかチェズニー医師に訊く。受付に人がいれば階段を下りただけで目に留まる。したがって二階の病室の窓からだと医師が答える。 ハボック記者が、暴行犯を捜索したときのことを答える。エリスの病室の窓の錠前が壊れていたから、ここから逃げたのだろうという話に落ち着いた。 オペラが話を整理する。玄関は二時五十五分以降は(受付が目撃していないから)通っていない。洗面所の窓は大人が通るには狭すぎる。エリスの病室しか出口はない。  
  174   357 オペラが再びチェズニー医師に訊く。エリスの病室にはベッド脇に置時計があり、三時ちょうどに音楽を奏でる。あれは毎日鳴るのか。薬の時間を知らせるオルゴールであり、毎日鳴ることを医師が肯定する。もし大時計が正しい時刻を刻んでいたなら、暴行犯がエリスの病室を通ったときオルゴールが鳴っていたはず。 ここ二週間ほどで意識がかなり戻っていた、エリスは身体を動かせないだけで、瞬きの回数で意思疎通が可能になっていたとチェズニー医師が説明する。 アンデルセンが毒羊に確認する。シュノ犯人説でもミチル自殺説でも、大時計は五分遅れていた前提であり、エリスはオルゴールを聞いていないと答えるはず。毒羊も、エリスを法廷で証言させることに賛同する。 エリスの意識が戻っていることを毒羊は知っていた。シュノとして療養院を訪れた際、チェズニー医師から相談を受けたため。 しかしオペラには時期尚早として明かしていなかったはず。どうして気付いたのかと医師が問うと、病室を訪れるうちにそんな気がしたとオペラが答える。 ⇒本当は No. 176のとおり、灰色の便箋で知った。
  175 360 法廷にエリスのベッドが担ぎ込まれる。メイスンの囁きに耳を貸したことにオペラが後ろめたさと不安を覚える。  
  176   361 オペラが、メイスンからの便箋にあった文章を思い返す。 エリスを証人喚問することはメイスンの提案だった。エリスは覚醒しており、感応の魔法でコンタクトを取ろうと試みた。病室で笑ってしまったのはそのせいかとオペラは思い当たる。  
  177   362 一週間前、シュノたちが訪れたとき、騒ぎになったのは聞こえていたかとオペラがエリスに問う。エリスが肯定する。誰か窓を開ける音は聞こえなかったかと続けて問うが、エリスは眠ってしまう。 二度目の鐘の音が響く。残り二時間。休憩とすることをオペラが宣言する。 クロスパトリック夫人が握るロザリオを目にして、毒羊が息を呑む。事件当日、療養院に持参したロザリオだと夫人が説明する。ポーチは証拠品として押収されたが、頭を殴られたときポーチから取り出して握りしめたのでロザリオは手元に残った。 青ざめた顔の毒羊が、オペラに世間話をもちかける。ミチルと個人的交流が深くなかったなら、そこまで復讐心を燃やすことなどあるものだろうか。あなたに言われる筋合いではないと言いつつも、疑念を覚えるオペラ。  
  178 366 控室に毒羊がダレカとバッドマだけを呼ぶ。 バッドマが、オペラに感応の魔法が効かなくなっていると不審がる。毒羊が、感応の重ね掛けは不可能なのかもしれない(他にも誰かがオペラに魔法をかけている)と言う。 アンデルセンにポーチを渡したとき、下の様子はどうだったか毒羊が訊く。暗くて床とアンデルセンくらいしか見えなかったとバッドマが答える。 毒羊がダレカに、オペラの腕時計を一時間進めることはできるか訊く。できないことはないとダレカが答える。 どうしてこの可能性を見落としていたのかと思う毒羊。メイスンはまだ生きていて、この裁判を破滅へ導こうとしている。  
  179   368 小型爆弾が爆発する。毒羊が開けたドアのノブには黒い紐が括り付けてあり、ドアを開けることで起爆する細工がされていた。 意識を取り戻した毒羊が、医療用のハサミで右手の指を切り落とす。  
  180 370 事件の資料を見返していたオペラが、弁護側の控室での爆発音を耳にする。 弁護人を暗殺するとは正気かとダレカがオペラに食って掛かる。  
  181   370 毒羊を病院へ搬送すべく、審理の終結を宣言すべきかオペラは決断を迫られる。復讐心が燃え上がり、審理の再開を宣言する。オペラが腕時計を見ると午後五時五十五分、刻限まであと五分しかない。 エリスが目を覚ます。オルゴールは鳴っていたかオペラが質問すると、エリスは否定する。重ねてオペラが質問する。オルゴールが鳴ったのは犯人が通った五分ほど後だったのか。エリスはそれも否定し、オペラは混乱する。大時計の時刻は正確か、遅れているか、二つに一つだったはずなのに。 質問を続ける。オルゴールの音楽は聞こえたと認める。犯人はそもそも病室を通っていないのかという問いに肯定する。廊下で夫人が襲撃され、記者たちが病室へ入るまで、誰も病室に来ていない。 大時計は進んでいたのではないかとダレカが口走り、バッドマに慌てて口を塞がれる。 「だからどうした~」が太字。 ⇒No.189 エリスによる感応の魔法の影響。
  182   375 陪審員の判断が下る。アンデルセンは六枚のまま。ダレカ、バッドマ、エリスは十枚。 チェズニー医師がエリスの名を呼ぶが、もう反応を示さない。オペラが腕時計を見て、混乱する。六時を過ぎたのに審理が終了しない。 右半身が熱傷に爛れた毒羊が姿を見せる。ダレカが腕時計の時刻をずらしたことを明かす。シュノが犯人という話はでっちあげだと、オペラに切断された指を放る。シュノの指を切り取って、拳銃に付着させた。  
  183   377 毒羊の説明の続き。襲撃されたクロスパトリック夫人はポーチからロザリオを取り出し、ずっと握りしめていた。ロザリオがポーチの中にあったのは、夫人が療養院に来てから暴徒に襲われるまでの間だけ。ところがアンデルセンは毒羊に、ポーチの中にロザリオがあったと口にした。アンデルセンがポーチの中を覗いたのは、空き家の書斎へバッドマによって運ばれた後だけなのに。 アンデルセンこそが襲撃犯であり、ミチルを殺した犯人であり、メイスンに他ならない。  
  184   378 身柄を拘束されていたアンデルセンがどうやって爆薬を法廷に持ち込んだのか。エリスのベッドに隠したのだろうと毒羊が推理する。 オペラに毒羊が手の内を明かす。大時計が五分遅れていることを知っていた。事件について調査し、ミチルによる自殺だと判断した。それは誤りだった。金の拳銃を盗んだり本棚に弾丸を撃ち込んだのもアンデルセンだろう。時計が五分遅れている前提ではミチル以外に犯行可能な人物がいなかったため推理を誤った。  
  185   380 アンデルセンが否定する。列車が通過したのは三時五分から十分の間、大時計が五分遅れていた前提ならポーチが書斎に運ばれたのは三時十五分、アンデルセンには貨物列車に銃を捨てることができない。 そもそもアンデルセンは書斎にいなかったと毒羊が反論する。療養院にて夫人を三時四分に襲い、ポーチから拳銃を抜き去った。エリスの病室の窓から抜け出し、書斎に呼び出したミチルを窓の外から射殺、三時五分に通過する列車へ拳銃を投げ捨てた。 アンデルセンが再び反論する。アトウッド老嬢はアンデルセンが書斎へ戻るのを目にしていない。 毒羊がそれを否定する。アトウッドがいたのは古書業者が来るまで。その後で階段を上がり、古書業者らが遺体を見つけて驚いている隙に本棚の裏を通り、気を失ったふりをした。  
  186   381 そもそも毒羊はなぜアンデルセンを信じたのか。ポーチを盗んだ後、書斎にいたアンデルセンにポーチを渡したとバッドマに聞いたからだった。 ダクトはアンデルセンが設えたものだった。蛇腹部分で折り曲げ、書斎の隣の空間にダクトの穴を向けた。アンデルセンは実際には書斎にいなかったが、バッドマには床とアンデルセンしか見えないため、書斎にいると勘違いした。  
  187   382 毒羊が意識朦朧となる。説得するようオペラに頼む。誰を説得しろと言っているのか、オペラにはわからない。残り時間は二十分ほど。そもそも、なぜ毒羊は腕時計をずらすようダレカに頼んだのか。 残り五分と勘違いした、絶妙なタイミングでエリスは目覚め、証言した。仮にアンデルセンがエリスの瞼を操れるなら。しかしチェズニー医師の目をごまかすことはできるだろうか。アンデルセンも残り五分と聞いて驚いていた。 もしもエリスが自由意志で嘘を吐いたとしたら。あなたは死を望んでいるのかとオペラがエリスに問いかける。  
  188 385 自我を取り戻したとき、エリスはカラーの死を覚えていた。孤独と絶望に怯えた。覚醒と激痛を繰り返し、心が削られた。回復する見込みが絶望的なことを理解した。 エリスに意識があると気づいたアンデルセンに、苦しみから解き放つことができると声をかけられた。 ハロルドの墜死事件についてアンデルセンが語る。空き部屋の真下にいたのでカラーとハロルドの会話が聞こえた。 カラーは箒で空を飛んで逃げようとした。恐らくハロルドは箒を掴んでベランダから身を乗り出し、落ちたのだろう。客観的には事故死だが、カラーは自分がハロルドを殺したと思ったのではないか。アクトンの自殺もあり、カラーは自分が罰せられるべき人間だと思っていた。 カラーはエリスを助けるためではなく、死に場所を見つけたと思って自ら火刑に処される行為に及んだ。だからエリスは、カラーが救ってくれた命だから無駄にしてはいけないなどと気兼ねする必要はない。私は敬虔だから、最後までやり遂げられるとアンデルセンが約束する。  
  189 389 オペラの推理が続く。エリスはカラーを喪い、熱傷に苦しみ、死を願った。それでアンデルセンと取り引きし、偽証した。暴行犯が病室に来なかったと嘘をついた。 感応の魔法でアンデルセンのために状況を整えた。出廷する気はなかったはずのバッドマが考えを変えた。オペラの復讐心をかき立てたのもエリスではないか。事務所でミチルを抱きしめたことがあったが、エリスの病室から事務所は目と鼻の先にあるし、そこを事務所とするよう勧めたのはアンデルセンだった。 アンデルセンを憎む気持ちが太字。 ⇒No.189 エリスによる感応の魔法の影響。
  190 391 火刑に処されたカラーのもとへ駆け付けたときのことをエリスが回想する。 カラーがエリスに語り掛ける。あの日、ぼくは君に魔法をかけた。カラーはエリスの罪悪感を封じ込めたとエリスが気付く。ダレカやバッドマまで巻き添えにするアンデルセンの計画に加担したのはそのせいだった。カラーの魔法が時間切れを迎え、罪悪感が蘇る。  
  191   394 エリスが目覚める。一か月ぶりに瞼が開き、起き上がる。 嘘をついたことを認める。オルゴールが鳴った五分ほど後に暴行犯は出て行った。  
  192 395 オペラが結審を宣言する。最後までやろうぜと笑うアンデルセン。残り四十秒ほど。アンデルセンが、私は魔女だと言う。 クロスパトリック夫人が襲われた直後の写真を示す。ポーチがエリスの病室の、扉のドアノブのすぐ下に落ちている。アンデルセンは病室に入れなかったはず。扉は外開きだから、ポーチがこの位置にあったなら扉に動かされたはず。夫人を襲った後、猫に姿を変えて扉の上の開口部をくぐったからだ。 残り十秒。オペラは推理する。ポーチを持ったまま病室に入り、開口部から落としたのではないか。いや、気絶した夫人の指先がポーチに乗っているのでありえない。そもそも夫人の悲鳴を聞いたシュノたちが駆けつけるまで十秒もなく、現場に細工できるはずがない。 終結を告げる鐘の音が鳴る。陪審員の判断が下る。十二枚中七枚が『アンデルセンは魔女』を示す。アンデルセンが火刑に処される。  
  193 401 オペラの法律事務所をバイコーン警部が訪れる。 アンデルセンは魔女ではなかったとオペラは確信していた。最後にアンデルセンが披露した魔女の証明は、単純で姑息なトリックによるものだった。これからもよろしく頼むと、バイコーン警部がオペラに握手を求める。  
  194 403 毒羊が療養院へ。エリスの病室に入るとダレカが驚く。裁判以来、エリスは一度も意識が戻らない。 シュノは原因不明の失踪扱いになっている。海を越えて魔女を探しに行くつもり。魔女の能力は伝承上の魔女術を再現するかのように発現するのだから、治癒の力が使える魔女がいるかもしれない。 病室を去ろうとするとき、毒羊の胸が温かな気持ちでいっぱいになる。  

図表一覧

15 ヴェナブルズ邸
90 アルマジャック記念公会堂
143 ソドベリー・クロス駅プラットフォーム
163 執務室
205 オペラの主張するダレカの移動経路
225 裏口とトラック
275 ベルガード療養院
309 黒板の平面図
345 時刻表
359 時計の進みと魔女判定
383 羊の描き込み
399 ポーチの落ちていた位置

登場人物一覧

主要登場人物

第Ⅰ部の登場人物

第Ⅱ部の登場人物

第Ⅲ部の登場人物