※七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』(東京創元社、2010年7月30日 初版)に基づき作成した。

早引表

No. 目次 節# 頁 内容 伏線・備考
1 プロローグ   4 激情にかられた手に押されて、校舎の屋上から地面へと墜落する身体。 “「なぜわたしを?」”“「わたし、あなたの――じゃないのに?」”(p.4)
2 冬の章Ⅰ   5 七海警察署をわたしが訪れる。墜落事故の回想。
七海中央病院へ。眠り続ける彼女。
“カウンターの向こうで不審気な表情をした窓口の男性の問いに、北沢春菜です、と答えると”(p.6)
“わたしは病室で彼女のお母さんに会った。見舞いに通うわたしに一見普通に接してくれるお母さんだが、以前に会った時とは打って変わったその憔悴ぶりは痛々しかった。”(p.9)
3 春の章――ハナミズキの咲く頃―― 1 12 保育士として順調な日々を送る北沢春菜。
一ノ瀬界が入所することとなった事情。
 
4 2 15 七見峠へのピクニック。
鷺宮寮が入所することとなった事情。
七海崎灯台が飛び地であること。
つばめ寮の名前の由来。手旗信号が共有された。
界が興奮し、暴力を振るう。
「あの崖で、俺、母さんに殺されそうになった」
“船、と茜が言った。え、どこどこ? ときょろきょろしたわたしは茜の指さした先を追い、目を懲らしてようやく船影らしき小さな白い点をみつけることができた。”(p.20)
5 3 25 界の回想。困窮した生活、施設の思い出を語る母。
突如アパートを退去し、七海学園の近くへ。母に崖から突き落とされる。
 
6 4 32 界と春菜との会話。バレーボールに参加する。
遊び時間はおしまい。佳音が転がるボールを追いかける。
“強い風が吹き、茜はあわてて目を押さえた。目にゴミが入ったみたいだ。”(p.35) 茜は顔を洗うためトイレに行き、戻ってきたときには“眼鏡をかけた彼女はさっきより一段と理知的なオーラを出して”(p.35)いた。2節の描写との矛盾に注意。眼鏡をかけていなくとも、茜は船影を指摘することができた。
7 5 36 界を、母親の遺体がみつかった場所へ連れて行く。
海岸道路の風景に高校時代を思いだす。
界の父親の勤務先、荒鷲興業を訪ねる。
界の母は七海学園だけではなく、別の施設も経験していた。
界に会ってほしいという頼みを断られる。
 
8 6 47 海王が七海学園を訪れる。謎解き。
「救われたのはわたしたちではありませんか?」
 
9 冬の章Ⅱ 1 60 茜から、文化祭の日に瞭が屋上にいるのを見たと知らされる。
佐奈加に、受付をしていたときの出来事を訊く。
一週間の有給休暇、自分で調査をしようと決意する。
“「野中先生さっきのところもう一回だけ教えてよ」”(p.60)
“「その後、あなたが受付してる間、他に誰か来た? わたしが行く前に」「ううん、他の人は誰も通らなかった。春菜さんだけだよ。でも」”(p.63)
10 2 65 県立七見西高校を訪れ、芦田将から話を聞く。瞭とは話していない。
西校舎の東階段を二階で封鎖していた一年生の女の子から話を聞く。
屋上から東階段に出入りがあれば、扉の音でわかる。
“ちょうど学園の子の一人が、向こうの校舎から出てきたところでわたしの姿を見かけたらしく、せんせー! と大声を出して”(p.72)
“「ああ、七海学園さん」”(p.72)
11 3 72 七海中央病院の入り口で、高村に声をかけられる。
手伝えることはあるかと気遣われるが、断る。
“それはまるで思いがけず彼に再会したあの夏の朝と同じだと気づいたのは”(p.73)
“連絡を受けたお母さんはほとんど半狂乱の状態で抗議し、こちらへ来た時は学園の対処にも苦情を言っていたらしい。しかしその後は彼女に会いに来ておらず”(p.74) p.9との矛盾に注意。
12 夏の章――夏の少年たち―― 1 76 城青学園との練習試合についての会話。ウランとサッカーのこと。
ウランとアトムが入所することとなった事情。城青学園のサッカー部のこと。
ウランが城青学園のキーパーと話をしていた。
葉子、裕美、亜紀の勉強をみる。誕生花の話題。
亜紀は瞭から花言葉の本をもらった。
城青学園のサッカーチームは人気があり、ファン同士でケンカになるかもしれない。
ハナミズキの花言葉は「わたしの思いを受けて下さい」(p.82)
13 2 83 春菜のアパートに母が来ていた。結婚する兄の事情で車をアパートの駐車場に。
運転を練習し、サッカー大会では運搬係を引き受ける羽目になった。
県南スタジアムで「ぼんやりさん」になった佳音。高村駆と再開。
「はるのん? なんかぼーっとしてる?」
高村との思い出を回想。城青学園サッカー部とすれちがう。
瞭が夏休みは自宅外泊していること。母親の性格、ヴァーミリオン・サンズの話題。
同級生の西野と瞭が、予約席に座っていた。
七海学園男子チームが桜沢実践学校の二軍に負けて戻ってくる。天馬の記憶能力。
桜沢実践学校と城青学園との試合。少し離れた席に城青学園の副園長。
試合終了、通路に向かう女の子たち。しかし誰も来ない。
“「ほんと――頭に葉っぱついてたよ、ほら」「ありがと――あれ?」”(p.87)
城青学園のキーパーが試合前“彼は重そうなクーラーボックスを肩にかけて運んでいた”(p.89)
試合後、チームのベンチに“ふたの閉まったクーラーボックスが地面に投げ出され、そばには十何本ものお茶やらスポーツドリンクのペットボトルが置かれている”(p.98)
14 3 99 スタジアムを捜索することに。ウランにクーラーボックスの飲み物を運ぶよう頼む。
海王さんに事情を話す。携帯電話でどこかに連絡をとった後、児相に戻りますと言われる。
“「ウラン、風邪でも引いたの?」「ペットボトル山のように抱えてきたから身体冷えたんだろ。それよりコーラは?」”(p.102)
15 4 103 大会終了。桜沢実践学校のキャプテンがウランに、お前なかなかやるなあと言う。
海王から電話。城青学園の少年たちが中央児相に現れ一時保護を求めた。
ゴールキーパーだけいない。車で春菜も中央児相へ向かう。海王からもう一言。
“女子だけになってしまった城青学園の子たちも同じだ。何か気持ちの整理をつけたかのように軽々とクーラーボックスを背負って早足で歩く子もいた。”(p.103)
16 5 106 佳音とヴァーミリオン・サンズへ。店内の様子。予約席のこと。
事件の顛末と謎解き。
春菜がハナミズキのブローチをつけていることに気づく佳音。
高村と会う約束をした。ドン・ヘンリーの"The Boys of Summer"。
 
17 冬の章Ⅲ 1 118 県立七見西高校を訪れる。バンドの練習が始まっていた。
実行委員の女の子から学園祭のステージがジャスト十二時に始まったと知る。
西野香澄美から事故前後のことを聞く。
“「ええ――知ってるよね――」”“「はい。七海学園の北沢さん、でしたよね」”“わたしは少し声を落とした。改めて自己紹介をすると、”(p.119)
“「茜だわ。あの子目が大きいってあんまりわからないよね、眼鏡かけてると」「眼鏡してるんだ、勿体ない。でもなんでまたその子はそんなふうに訊いたのかなって思ってた」”(p.120)
18 2 123 西野から瞭との関係について聞く。ヴァーミリオン・サンズへ。
自殺した織裳莉央に瞭は似ていた。メメント・モリ。
高村に電話し、学園祭の屋外ステージでやっていた曲の題名を訊く。
カルメン・マキ&OZ『崩壊の前日』。
“「そういえば前にも北沢にCDのこと訊かれたな」”(p.130)
19 初秋の章――シルバー―― 1 132 春菜の兄が家を出る。佳音が週一の学習ボランティアに来る。
茜の視力が低い理由。学習室に来ない遼を佳音が呼びに行く。
樹里亜が入所した事情。寄せ書きの話題で盛り上がる。
佳音から携帯電話に電話、遼が睡眠薬で自殺を図った。
 
20 2 136 翌朝、小泉から、樹里亜の寄せ書きが無くなったことを知らされる。
犯人はエリカと推理する。樹里亜とエリカの睨みあい。盗んだことをエリカが認める。
 
21 3 140 寄せ書きがみつからない。エリカが入所することとなった事情。
海王に電話で相談。意外な発想が必要なのかも。
静養室に瞭を訪ねる。問題を解決してくれるなら、寄せ書きについて話す。
 
22 4 145 一年前の夏、崖に来た瞭。織裳莉央との出会い。
危ないところが好き。「アルバトロスって羽ばたかないのよ」
写真をCD-Rに入れて送ってもらう。崖からの転落死を報じる新聞記事。
母親を骨折させ、七海学園へ。莉央の家庭事情。
何か食べたいものある? 「エンドウ豆のスープ」
 
23 5 154 "mope 【more】"。高村にCDのことを相談する。ケースの右下隅に「RNidT」。
CDを見るついでにテニスを。柿の木から狙った実をサーブで落とした。
駒田に怒鳴られたエリカを面接室に押し込む。高村との約束はドタキャンに。
瞭を捜してヴァーミリオン・サンズへ。オーナーに誰を探しているのか訊かれる。
予約席にいた瞭。ブローチとひきかえに寄せ書きのことを教えてもらう。
寮の家庭環境。ネコ。字はケースの内側から書かれていた。
 
24 6 169 寄せ書きをホワイトボードに再現しようとする天馬。
エリカと寄せ書きの意図について話す。
CDの謎が解け、遼に説明する。
 
25 7 177 海王に事件の顛末を説明する。本当に樹里亜はなにも気づいてなかったのか。  
26 冬の章Ⅳ 1 184 県立七見西高校を訪れる。佐奈加に、瞭が正確にはなにを言っていたか訊く。
お化け屋敷の見張り番の子に扉のことを訊く。
 
27 2 185 屋上で松平士朗(ショーヘイ)に墜落事故のことを聞く。
西野、莉央、瞭との関係。莉央の奇行。
 
28 3 191 応接室で園長と話す。あと二日間でわからなければ警察へ委ねると約束する。 “廊下を子どもたちが「学習時間に間に合わなくなっちゃうよー」「先生来てる?」”(p.192)
29 晩秋の章――それは光より速く―― 1 196 望(のんちゃん)が入所することとなった事情。出所した父親が押しかけるかもしれない。
佐奈加の表情が暗い。「春菜さん、あたし、妊娠したかもしれない」
小泉が戻ってくるが、望がいない。
管理棟へ。宅配便が届く。二人目の来客が、娘に会わせろと要求する。
“「来月は受験勉強追い込みだから月水金で来るよ」”(p.196)
30 2 202 小泉からの内線電話。佐奈加を田中レディースクリニックに連れて行くよう頼む。
望がやってくる。もう少しプレイルームで遊んでいるよう伝える。
 
31 3 206 男がリンゴを剥くにはいささか長すぎる刃物をとりだす。
「絶対に行かせない!」プレイルームから望が戻ってくる。つばめ寮へ。
 
32 4 210 つばめ寮の裏からリビングダイニングを覗く。界に、皆揃っているよねと訊く。
望がプレイルームに本を忘れたと言いだす。管理棟へ戻る。
玄関に界の姿。見学はあとどのくらいで終わるのか。
鏡の前で体操を始める。カップ麺をふるまう。
望がなぞなぞをだす。「光より速いものはなんでしょう?」
鏡の中に、誰かいたと望みが言う。宅配屋さんが望をトイレに連れて行く。
七海学園には幽霊がでると説明する。捕り物。
マジックミラーと変な体操の意味。佐奈加を病院へ連れていった小泉が駆け込んでくる。
父親を目にし、小泉が鬼のような形相をする。
 
33 5 218 小泉の家庭事情と、父親が押しかけてきた経緯。
玄関を出た辺りで、海王と望と宅配屋さんが話をしている。宅配屋さんが帰る。
界に礼を言う。手旗信号の意味がわかったのは瞭だった。
海王に経緯を聞く。望さんのお父さんはいましたよ。
 
34 6 224 謎解き。「北沢さん、今夜あなたは本当に立派でした。しかし、危険すぎた」
佐奈加と会話。モーニングアフターピル。自分を大事に。
瞭に頼み、ヴァーミリオン・サンズの特別席に座らせてもらった。
 
35 7 231 佳音と会話。小泉のその後。高村と会ったときのことを回想。
「凄いって思えるところがない子のことをいい女なんて思えない」
高村は来年から海外勤務になるかもしれない。ブローチが無いことを指摘される。
ヴァーミリオン・サンズで佳音と一緒に瞭をみつけたときのことを回想。
寮のPCで莉央の写真を見る。瞭と向き合わなきゃ。
 
36 冬の章Ⅴ 1 242 永川夫婦からのはがきを読む。CD『閉ざされた町』を高村が持ってくる。
高村の車でファミレスへ。CDを聞く。ヴァーミリオン・サンズへ。
男性の予約席を頼むが、高村は断られる。
“翌朝、アパートの扉の前にいたわたしは、北沢さん、北沢さんですよね? と大きな声で呼ばれているのに気がついた。”(p.242)
“家の中は割と綺麗に片づけてあるけど、そういう問題じゃない。”(p.243)
37 2 245 屋上での出来事を時系列順に整理する。
未知の人物が関わっている余地はない。窓の揺れはバンド演奏のせい。
茜が眼鏡をかけていなかったことに気づく。
二人の若い男にぶつかり、絡まれる。高村に助けられる。
車で送ってもらい、アパートへ。ノートパソコンでCDを聞く。
四冊のノートを読み始める。
“「待てよ、春菜の動きを入れないと」”(p.247)
“高村くんに再会した日、風は少し強く、並んで歩く友の手がさりげなく伸びてわたしの後ろ髪にくっついた木の葉をとってくれた。” p.87との矛盾に注意。葉をとってくれたのは春菜。
38 冬の章Ⅵ 1 258 『イントロダクション』の長さからすると、東階段から屋上に入った者はいない。
屋上で西野香澄美と会う。
 
39 2 259 ヴァーミリオン・サンズのシステムを教えたのは西野ではないか。
煙草を吸ったのは西野、高所恐怖症を紛らわせるためだった。
まだ画廊だったヴァーミリオン・サンズで莉央を好きになった。
「あなたは汚れてなんかいない」
 
40 3 267 学園へ。茜がコンタクトレンズも使っていることを確かめる。正門で高村と会う。
なぜ瞭はABC以外とわかったのか。瞭がブローチをつけていたとなぜ知っていたのか。
仕事への屈折で、春菜に会いたいと思っていた。
瞭とヴァーミリオン・サンズで偶然会った。
高村は文化祭の日、七海西高校に来ていた。
中庭で、ブローチをつけた瞭が春菜と言い争っているのをみかけた。
管理棟へ。瞭を問い詰める。
“「あれ、今日来る日じゃなかったよね」”(p.268) この日は日曜日、十二月に佳音が学習ボランティアとして来るのは月水金(p.196)。
41 4 278 墜落事故前後の佳音の回想。
『わたしはあなたの寮じゃないのに』 春菜を突き落とした動機。
春菜は瞭の母親と話をしていた。母親もハナミズキが好きだった。
ハナミズキには別の花言葉もある。CDの暗号と「モーリ」の意味。
 
42 5 299 園長と大隈とで瞭を連れて警察に出頭することに。  
43 エピローグ   301 瞭のその後。ヴァーミリオン・サンズの閉店。
佳音は仕事を通じて高村を以前から知っていた。
海王との会話。子供たちの近況。
 

登場人物一覧

■七海学園の職員
北沢春菜 七海学園、つばめ寮の保育士。
野中佳音 春菜の親友。学習ボランティアとして週一回高校生の勉強をみている。
小泉ときこ つばめ寮に新採用された職員。
林 かもめ寮の児童指導員。
河合 つばめ寮の同僚。
駒田 消灯時間にうるさい職員。あだ名は「コマチ」。エリカの担当。
松川 ひばり寮の看護師。
牧場 児童指導員。あだ名はマックス。
大隈 ひばり寮の大ベテラン保育士。
 
■七海学園の入所児
鷺宮瞭 県立七海西高校二年生、美術部員。両親が離婚前は「長友」姓だった。
田後佐奈加 県立七海西高校二年生、美術部員。文化祭で美術部第二展示場(屋上)の受付をしていた。
一ノ瀬界 小学六年生。かもめ寮。四年前にY県の南端近い崖下の道路で死亡していた母親とともに発見された。
松平士朗 屋上に出入りした生徒の一人。最年長で唯一の高校生男子。あだ名は「ショーヘイ」。
茜 小学六年生。眼鏡をかけることがある。屋上の瞭を目撃した。
エリカ 中学一年生。寄せ書きを盗んだと疑われる。
舞 中学一年生。ひばり寮。エリカをかばった。
明 高三男子。
安藤藍 通称ウラン。スポーツ万能少女。
安藤努 通称アトム。藍とは二卵性双生児の兄。
天馬 中一。視覚的な記憶力が際立って優れている。
沙羅 中二。
葉子 中三女子。春菜が担当している。つばめ寮きっての無愛想娘。
裕美 中三女子。春菜が担当している。
亜紀 おしゃべり娘。ひばり寮だが始終つばめ寮に出入りしている。
樹里亜 中一。ひばり寮。寄せ書きを喜んでいた。
望 五歳。つばめ寮。小泉の担当。出所した父親に連れ去られそうになる。
永川俊樹 七海学園の卒業生。三月に美香と結婚。
永川美香 七海学園の卒業生。三月に俊樹と結婚。
 
■その他
海王 児童相談所の児童福祉司。
山根 児童指導員
   
石田 刑事。墜落事故の担当者。
   
真知 界の母親。
天堂 界の父親。荒鷲興業のマネージャー。
   
芦田将 屋上に出入りした生徒。
西野香澄美 屋上に出入りした生徒。
織裳莉央 去年自殺した少女。
   
高村駆 春菜の高校時代、バドミントン部の男子キャプテンだった。
雅春 春菜の兄。もうすぐ結婚して家をでる。
   
岩井 城青学園サッカー部のキーパー。
浅見 城青学園サッカー部のエースでMF。
田中 城青学園サッカー部のFW。