世界の真ん中

 南極観測隊を乗せた船が、フリーマントルに立ち寄った。
 港で幼い兄弟が会話を交わしていた。「ニューヨークはどこ?」「香港は?」弟が問うたび、兄が四方八方を指さす。
 隊員の一人が呻くように言った。
「俺たち世界の果てを目指してきたのに、どうやらここは世界の真ん中らしいぞ」