右利きの犯行

 以下の推理クイズが、論理的には成立しないことを説明せよ。
「問:背後から襲われ、後頭部の右側を殴られた死体がみつかった。警察の捜査で三人の容疑者が浮かんだ。AとBは右利き、Cは左利きだった。犯人は誰?」
「答:犯人はC。左利きのCが、右利きの犯行にみせかけた」

 前提として「各容疑者は自分の利き腕を知っており、捜査後にたがいの利き腕を知らされる」「犯人は自分が犯人であることを誰にも知られたくない」とする。
 まずCは犯行前、自分だけが左利きとは知らなかったはず。知っていたら、答の通り右利きの犯行に偽装する者はC一人に特定できてしまう。
 Cが利き腕を偽装することで自分が犯人だとはバレないと確信するのは、右利きがAとBのどちらか一人だけだと思い込んでいたときのみ。それならば、一人だけ右利きの人物が犯人だと断定されるか、あるいはもし偽装を疑われても、左利きの二人のどちらが犯人なのか警察は絞りこむことができない。
 したがってCは事件前、AかBのどちらかを左利きだと思い込んでいたはず。ここでCがAは右利き、Bは左利きだと思い込んでいたと仮定する。
 ここで、Bの視点から考えてみよう。Bは自分が左利きかつ犯人ではないと知っており、捜査後に他の容疑者の利き腕を知らされれば、犯人は同じ左利きのCだと結論する。
 けっきょく、Bに自分が犯人だと推理されることが、Cには予想できてしまう。従って、Cはそんな犯行を実行しない。よって、この推理クイズは論理的に成立しない。