愛情

 暑い。脳汁垂れる。唇からピンクの自意識がこぼれてアスファルトで気化する。
 恋人が、突然倒れた俺にとりすがって泣いている。俺は死んだのだろうか。スーッと恋人のもとへひきよせられ、耳の穴に吸いこまれる。暗い空洞のなか、誰かがそこにいた。見覚えのある、懐かしい横顔。
 その正体に気づくと同時に激しい感情がこみあげ、俺は涙のしずくに変化した。彼女の瞳から自分の頬へポタリと落ち、唇に流れこむ。
「タケシ! よかった、生き返ったのね!」
「俺を……ずっと騙してたんだね、母さん」