快晴の大学構内。道端で三人の数学者が、記号だらけの大きな紙を手にして侃々諤々に言い争っていた。
その傍らを数学科所属の大学院生が通り過ぎようとした。たしか理学部棟で学会が催されているはずだ。この人たちは学会の参加者だろう。
数学界において至宝の存在とされる天才的な頭脳たちが論争している様子に、学生は思わず足を止めた。いったい、どんな話をしているのだろう?
「あ、ちょっと君」
声をかけられ、学生は動揺した。本の著者近影で見覚えのある、小さなレンズの眼鏡をかけた学者が手招いている。世界の知性に自分が手助けできることはあるだろうか。
「ここへはどうやっていくのかね?」
数学者は、そう言って赤丸の記された地図を差し出した。